●広尾学園社会科入試問題について

近年受験生に人気の広尾学園中学校です。国語に続いて社会科の問題について分析をしていきます。本校の問題には一般的な中学受験レベルの知識を超えるものは、ほとんどありません。その意味では特別の対策は必要ありません。ただし、知識を活用して考えないと解けない問題が多く出題されており、決して容易な問題とは言えません。難問というよりも良問中心の出題と言えるでしょう。

また、試験時間は30分であり、大問が4問あることからスピードも要求されます。実際に2019年度第1回の入試問題を見ていきましょう。
合格者平均は50点満点で32.4点ですが、8割の得点は目指したいものです。

●2019年度(第1回)問題分析

大問1は地理の問題です。「以下の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。」とあり、
冒頭に本校の修学旅行の歴史についてのグループミーティングの様子を記した二十六行にわたる文章があります。この問題ではこの文章を読み解かなくとも解答はできますが、四つの大問全てが「以下の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。」のスタイルで冒頭に結構長い文章があります。恐れることはありませんが、こういう出題がされることを想定しておいたほうが良いでしょう。問題によっては冒頭の文章を読まないと解けない問題がありますので留意が必要です。国語の力も重要なのです。大問1は地理の問題は、さほど難しくありませんが、地名とその位置を正確に理解していないと解きにくい問題が何問か出題されています。とは言え、有明海や淡路島などの必修の地名に関わる問題です。テキストの横には必ず地図帳を置き、位置を確認する習慣を是非ともつけておいてほしいと考えます。これを繰り返していれば主要地名や位置は、自然に身につきます。

           
なお、フード・マイレージに関する記述問題が出題されています。日本のフード・マイレージが他国に比べとても大きいことを表す図表を見ながら答える問題です。テーマ自体、難しいテーマではありませんが、図表を読むことには慣れておく必要があります。これには、過去問などの問題演習を繰り返して対応すると良いでしょう。

大問2は歴史です。これも基本的な知識を理解していれば解きやすいのですが、さすがに
覚えているだけでなく、知識を活用して考える力が求められる問題も含まれます。

問3 下線部③に関連して、次のア~オは、鎌倉時代に関するできごとです。これらのできごとを古い順に並べ替えたとき、2番目と3番目になるものをそれぞれ記号で答えなさい。ただし、ア~オの中に鎌倉時代と関係のない選択肢が1つ含まれているので、それは並び替えに含めなくてかまいません。
ア 御成敗式目が制定される。     イ 正長の土一揆がおこる。
ウ 博多湾の沿岸に石塁を築く。    エ 弘安の役がおこる。
オ 六波羅探題が設置される。

時代順に並び変える問題は頻出の難問と言えます。知識を活用しながら考えて解いていくことが肝要です。まず、室町時代のイを除きます。次に、それぞれに注目していきます。アの御成敗式目は、第三代執権の北条泰時の時代に制定されています。この知識は必修事項です(年代まで覚えていなくともかまいません)。オの六波羅探題、これは鎌倉時代の初め、後鳥羽上皇が起こした承久の乱を受けて、朝廷を監視する役割で作られたものです。これを思い出せば泰時の時代よりは古いことがわかり、まず、オ→アの時代順が明らかになります。続いてウ、エは元寇に関わるものですので、上の二つより後の時代であることは基本的な知識です。また、二度あった元寇のうち、一度目の文永の役の後で防塁が築かれています。これも受験生なら知っていてほしいレベルの知識です。二度目の元寇の弘安の役の前の出来事ですからウ→エの順となります。解答は、二番目がア、三番目がウとなります。既存の知識を活かし筋道を立てて考えれば確実に解答できるのです。

大問3は公民です。
公民も一般の受験レベルの知識があれば十分です。ただし、グラフを読ませる問題などに対応できる力が必要です。

問7 下線部⑦に関連して、次のグラフは家電製品の普及率を表しています。折れ線グラフのア~エのうち、カラーテレビを表すものを1つ選び、記号で答えなさい。なお、カラーテレビ以外は、白黒テレビ、電気冷蔵庫、電気冷蔵庫のいずれかを表しています。

白黒テレビ、電気冷蔵庫、電気冷蔵庫が三種の神器であることをまず知っていて、白黒テレビに代わってカラーテレビが普及したことを理解していると、簡単に解ける問題のはずです。ただ、こういう問題が苦手な受験生の多いことを実感します。グラフが読めずに知識が活かせないのです。学校はこういう問題ができる子を求めているはずなのですが。

なお、今年の4月から全面施行される「改正健康増進法」に関わる問題も出題されています。これは来年の入試でもマークすべき時事問題だと思います。

大問4は総合問題です。ここでも「以下の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。」とありますが、この問題はまずこの文章を理解する必要があります。赤十字社の誕生にまつわる話であり、創設者の母国であるスイスに敬意を表し、国際赤十字連盟誕生の際、スイスの国旗の赤白が反転した旗が使用されたことが使用されたことが記されています。 

問題:現在では次記【資料C】の左と中央のマークに加え、平成19年にレッドクリスタルと呼ばれる第3のマーク(右)が追加されました。現在、これはイスラエルなどで使われています。なお、レッドクリスタルは、そのマークの中にその国独自のマークを入れることもできます。なぜこの第3のマークであるレッド暮らし歌るが追加され、使用されるようになったのでしょうか。赤十字マーク(左)と赤新月マーク(中央)に関係する宗教名をそれぞれ明らかにした上で、第3のマーク(右)が使用されるようになった理由を述べなさい。
<解答>赤十字・・・キリスト教、赤新月・・・イスラム教
キリスト教・イスラム教のいずれにも関係しないマークを求める国や、国内で宗教上の対立がある国でも使用しやすくするため。

●まとめと対策

大問4は、おそらく本校が求める生徒には解いてほしい問題なのではないでしょうか。少なくとも何かしら記述してほしい問題なのだと思います。アルジェリア、マレーシア、トルコがイスラム教に関係の深い国であることは、知識として身に着けておくべきでしょうが、世界情勢に関心を持ち、自分の頭で筋道を立てて考えることができれば解答ができる問題です。

本校の社会科問題は、決して細かい特別の知識は必要としていません。むしろ、地図、図表、写真などを読み解く力、自ら社会的事象を見て、考えることのできる力を求めていると考えられます。当塾では、本校で求められるような学力の養成に力をいれています。