●語句の知識を問われる中学受験

中学入試の国語では読解問題が中心ですが、これとは別に独立した問題として、語句の知識を問う問題が出題されることがあります。このなかで、特に出題頻度が高いのは、「ことわざ」「慣用句」「四字熟語」です。これらの問題が出題される学校かどうかは、志望校の過去問を確認すればわかります。今までずっと出題があれば、ほぼ来年も出題されるだろうと予測できます。ただし、志望校で出題があるかどうか、あるいは中学受験をするしないにかかわらず、これらは小学生のうちに教養として身につけておいてほしいものです。

実際に中学入試ではどのような問題が出題されているでしょうか。ここでは、2018年の國學院大学久我山中学校の入試問題を紹介します。

問二 次の①②の□にそれぞれ漢字1字を入れ、下の意味になるようにことばを完成させなさい。
①□が高い(ほこらしく思うこと)
②親の□光(立派な親のおかげで子供が恩恵を受けること)
答え:①鼻 ②七
問四 次の①②の四字熟語にはそれぞれ1字ずつ漢字の誤りがあります。その字を正しい 字に改めて記しなさい。
①取拾選択
②大機晩成
答え:①捨 ②器

これらの問題は、ことばを知っていれば確実に正答できます。一方、知らなければ解答ができません。ですので、知識として着実に身につけておくことが重要です。ここで失点するのはもったいないのです。目安としては、六年生の夏休みが終わる頃には7~8割はできているようにしておきましょう。具体的にどのように学んでいったらよいか、今回は、比較的子供にとってはなじみにくい「四字熟語」について記していきます。

●四字熟語の学び方

受験に出るから覚えなければいけないという意識が先行すると、例えば暗記帳を使うなどして、とにかく頭に叩き込む学び方になってしまいます。意味を理解してから覚えるという流れを意識していきましょう。意味を理解して、読み方を身につけ、漢字で書けるようになればいいのです。

まず四字熟語は、四つの漢字が集まってできたものではなく、多くは二字の熟語と熟語が組み合わさってできたものであることを、理解しておくことが大切です。例えば「一期一会」、一期は、一度の人生を指し、一会は、一度の出会いを指す熟語です。ですから、この四字熟語の意味は、「一生に一度だけの、大切な出会いのこと」です。それぞれの熟語の意味を理解していれば、四字熟語の意味もある程度推測することができます。このように、熟語の意味を意識しながら学ぶことで、四字熟語は活きた知識として身についていくことになります。

さて、実際の入試問題では、意味や読み方だけではなく、きちんと漢字で書けるかを問うものが多く出題されます。四字熟語では、間違えやすい漢字が多いのです。ただし、四字熟語の意味を正しく理解できていれば間違うことは少なくなります。間違えやすい漢字の例をいくつかあげます。
〇絶体絶命   ×絶対絶命
「絶対」と書いてしまうことが多いですが、「体が絶え、命が絶えるくらい、
どうすることもできないこと」の意味ですので、「絶体」となります。
〇危機一髪 ×危機一発
「髪の毛一本ほどの近くまで、危機が迫っているということ」ですので、
「一髪」が正解です。
〇五里霧中   ×五里夢中
「夢中」と書きたくなるところです。五里は距離を表しています。おおよそ20kmです。五里にわたる霧のなかにいると方向がどちらかわからないという意味ですので、「霧」です。夢中になってしまってはいけないということです。
このように、意味を理解していれば、おのずと正しく読めて、正しい漢字が書けるようになるといって良いでしょう。

●漫画を学習に活かす

四字熟語を学ぶにあたっては、これがどのような場面で使われているのかを想像しながら学ぶことが大切です。漫画を用いたテキストが多く発行されているので、使ってみることをお薦めします。学習漫画は、国語以外の教科でも数多く使われています。勉強を身近に感じさせる意味で、大きな効果があります。苦手だった日本の歴史が、学習漫画を読むことで身近に感じられ、好きになったという話をよく聞きます。国語でも、同様の効果があります。無理やり頭に詰め込まれたものよりも、漫画を通して自然に頭に入ってきたもののほうが、後々記憶として定着するようです。以下に数点、四字熟語を題材にした漫画をご紹介します。

「小学生のまんが四字熟語辞典 改訂版」学研
「オールカラー マンガで身につく!四字熟語辞典」ナツメ社
「トムとジェリーの四字熟語がわかる まんが辞典」河合書房新社
「新版 クレヨンしんちゃんのまんが四字熟語辞典」双葉社
「四字熟語100ドラえもんの国語おもしろ攻略」小学館

例えば、「オールカラー マンガで身につく!四字熟語辞典」は、まず四字熟語のもととなる二つの熟語の説明があり、続いて意味、由来、使い方、まめちしきの順に構成されています。ここに、使う場面をイメージさせる四コマ漫画が加わっており、自然に知識が身についていくような工夫がされています。本書には、四字熟語が600語掲載されています。どの本を選んでもいいと思います。できれば自分で書店で手に取ってみて、一番しっくりいくものを選ぶのがいいでしょう。もちろんここで紹介したもの以外でも構いません。漫画のタッチが気に入ったという理由でもいいと思います。ことばの学習は、できるだけ楽しく、使う場面を意識しながら自然に進め、自然に知識を増やしていくのがいいと思います。焦らずに取り組んでいくのが大切です。