●当塾周辺の環境について

当塾は、駒沢オリンピック公園のすぐ近くに位置しています。閑静な住宅街であり、教育熱心なご家庭も多い土地柄です。治安も良く、ここが東京かと思うくらい、静かな環境です。一番よく聞こえるのは、公園でのスポーツ大会の応援の歓声くらいでしょうか。

例えば、当塾が学区に含まれる公立小学校では、約半数の児童が中学受験に向かうと聞いています。今回は、自分自身の様々な経験(教育系出版社、長男の受験、塾での指導体験)を踏まえて、この周辺の受験事情を考察してみます。

●たくさんある選択肢

どこの中学校に行くかと考えた際、地元の公立中学校を含め、この地域の子供たちにはとてもたくさんの選択肢があります。加えて、既に国私立の小学校に通っている子供たちのなかにも受験に加わる子もいます。当地はいわゆる東京の城南地区に位置するため、東京のほぼ全ての国立や私学、また、横浜、川崎の私学も選択の対象となります。

徒歩圏内の学校としては、都立の桜修館中等教育学校、東京学芸大学附属世田谷中学校が人気を集めています。桜修館中等教育学校は、1学年150名程の少数精鋭の学校です。2019年度入試では、東大、京大、東工大、一橋大の超難関国立大学への現役合格率が13.9%だったそうです。また、国立志向ながら、早大61名、慶大58名と、生徒数から比較すると驚異的な合格数を誇っています。

また、東京学芸大学附属世田谷中学校からは、(全員が進学する訳ではありませんが)東京学芸大学附属高等学校に進む道があります。当校は以前から東大合格者数ランキングの常連校で、2019年は全国で12位、44名でした。

十年ほど前の話で恐縮ですが、長男が地元の公立小学校を卒業した時は、百余名の卒業生が四十二の中学校に分かれて入学したそうです。現在は、児童数が増えていることもあり、もっと多くの学校に行っていることでしょう。また、当然のことながら、公立中学校に入学した場合も、都立高校をはじめとする高校入試での選択が可能となっています。

●恵まれた環境を活かして

この地域で学校生活を過ごせるということは、子供たちにとってとても恵まれたことだと思います。ご家庭もこの恵まれた環境を活かすことで、子供たちの将来を明るいものにしていくことができるように思います。学校や地域社会は、子供たちの成長をしっかり考えてくれています。地域での行事も盛んです。加えて、塾などの教育機関もたくさんあることから、子育てをするには最適な地域の一つであると考えます。

ただし、どの中学校に入ったか、どの高等学校に合格したかが人生を決めるものではありません。結果だけではなく、努力した過程、何を学んだかということも、とても重要なことです。入試を経験することで、子供たちは成長していきます。その成長こそが大切です。受験勉強をする機会を得たのならば、受験のための勉強だけでなく、将来に役立つ勉強をしてもらいたいと、願っています。

例えば、社会科の受験勉強、これは暗記だけでは合格しません。「宮﨑県では、ピーマンの促成栽培がさかんです」と覚えるのでなく、「宮崎県では、他の地域で生産できない冬の時期にピーマンの促成栽培を行うことで、多くの利益を上げています」とまで理解して初めて「学び」、すなわち将来生きる学力になるのです。

●生きていくのに必要な力をつける

入学試験問題は、その学校がどのような力を持った子を求めているかを知る、一つの指標とみても良いでしょう。意外といわゆる難関校では、細かい知識を問う難問や、問題自体が明らかにおかしい難問は、あまり多く出題されません。むしろ、基本的な知識は身についている前提のもと、文章や図表を読解し、自分の意見をまとめ、それを表現する力を試す問題が多く出題されています。これは、大学入試に必要な力は細かい知識ではなく、論理的に自分の頭で考える力だと、その学校が考えている証明ではないでしょうか。前述の桜修館中等教育学校は、適性検査が2題出題されるのみです。
出題方針は、次の通りです。

適性検査I 出題の方針~与えられた題材の中から課題を見つけ、情報を整理し、自分の考えや意見を正しく表現し、的確に文章にまとめる力をみる。

適性検査Ⅱ 出題の方針~ 資料から情報を読み取り、課題に対して思考・判断する力、論理的に考察・処理する力、的確に表現する力などをみる。               

そして、実際の問題です(2019年度の適正検査Iより抜粋)。
右の文章Aは明治から昭和にかけて活躍した哲学者 和辻哲郎が、小説家・幸田露伴 との思い出について書いた文章の一部分で、師である幸田露伴から学んだ、俳句を楽しむときの心構えを述べたものです。
文章Bは現代の哲学者 鷲田清一が、知性について書いた文章の一部分で、物事を考えたり判断したりするときの心構えを述べたものです。
この二つの文章は、同じようなことを述べていますが、その中には、ちがいもあります。あなたはこの二つの文章の共通する点と、異なる点を、どのように読み取りましたか。解答らん①には、物事に向き合うときの心構えについて共通する点を、二十字以上、四十字以内で分かりやすく書きましょう。解答らん②には、それぞれの筆者が伝えたいことについて異なる点を、「Aは……。」、段落をかえて「Bは……。」という構成で、全体で百四十字以上、百六十字以内で分かりやすく書きましょう。
また、この二つの文章を読んで、あなたはどのようなことを考えましたか。解答らん③に、あなたの考えを、いくつ かの段落に分けて、四百字以上、五百字以内で分かりやすく書きましょう。

大切なのは、文章を読み、論理的に考え、自分の意見が書けることです。国語力を養うことは、受験に役立つだけでなく、これからの人生を豊かにするものと確信しています。