●人気の広尾学園

当塾近辺の中学受験生にとって、近年人気の学校のひとつが広尾学園中学校です。本校はもともと100年近い伝統のある女子校でしたが、2006年度の特進科設置、文部科学省による「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール」の指定、翌年の共学化などを経て、進学校への道を急速に歩んできました。しっかりと大学進学に向けて勉強したい生徒にはお薦めの学校だと思います。

ICT環境の整備、カリキュラム革新、インターナショナルコース、医進・サイエンスコースの設置など、様々な改革が行われている学校です。偏差値も上昇しており、どのコースも日能研の偏差値で60を超えています。なかでも医進・サイエンスコースは御三家に近い偏差値となっています。大学合格実績は、学校ホームページによれば、国立大学45名、早慶上理ICUが170名(2019年)となっています。

●本校の中学入試

本校の入学試験、今回は国語(本科試験)を見ていきましょう。近年はおおよそ100点満点で70点台の合格者平均点となっています。本校の国語問題は決して難しくはありません。したがって、80点は取れるように練習を重ねていくのが大切だと考えます。近年の出題状況を見ると、大問は4つです。大問1は漢字、大問2は熟語、慣用句など、大問3は物語文、大問4が論説文となっています。

さて、実際に2018年度の第1回問題を見ていきましょう。合格者平均は76.3点でした。

基本的な語彙の知識があれば、決して難解な問題ではありません。ここまでは最少失点で乗り切りたいものです。

問一の漢字、読みは「拡張」「枚挙」「風評」「強いる」の4題、書きは6題で「スイテイされる」「世界文化イサン」「会社のエンカク」「自宅をカイチクする」「オトズれる」です。
問二は漢字パズル問題と慣用句で「同じ語を入れよ」の問題です(計5題)。
漢字パズルは「弱→□、縮→□、□→屋、□→雨」解答は「小」、同じ語は、「□がさわぐ、□を許す、□が折れる」解答は「心」などが出題されています。

大問三は物語文です。出展は小嶋陽太郎『ほくのとなりにきみ』です。合唱部を舞台にしたほのかな恋愛をテーマにした小説です。7問中6問は選択問題、うち1問は語句で「格好の餌食」と「そそくさと」の意味を問うています。文章自体読みやすい文章ですので、さほど難解ではないと考えます。

問七が記述問題です。

―線部⑧「胸の痛みは消えなかった。たぶん、物理的な痛みとは種類が違うのだ」とありますが、「物理的な痛み」との違いにも触れながら、六十字以上八十字以内で説明しなさい。

本文が読解できていれば、「胸の痛み」がどのようなものか明確にまとめることができます。加えて、条件となる「物理的な痛み」との違いに触れて解答を具体化していきます。筋道を立てて考えることができれば、決して難問でありません。

<解答>
身体を傷つけたり痛めたことから生じる肉体的な苦痛である物理的な痛みと異なり、
他人の心を傷つけたうしろめたさから生じる心の痛みであり、精神的な苦痛である。

大問4は論説文、出典は苫野一徳『はじめての哲学的思考』です。これは宗教について書かれた文で、筆者は明確に宗教とはどういうものなのかを、文中の何箇所かでまとめています。筆者の言いたいこと自体はつかみやすい文章です。問は7問で選択肢と記述問題がバランスよく配置されています。このなかで最も重要な問いが問7で、この文章の要旨を問う問題です。

「宗教」と「哲学」の違いについて、本文(※)以降の内容を踏まえ、「宗教」の問題点にも触れながら一一〇字以内で説明しなさい。

文章を読解し、「宗教」、「哲学」とは何かを記した部分を見つければ、文章中の言葉を使って解答することができます。これも論理的に読めていれば解ける良問と言ってよいと思います。

<解答>
宗教は教祖の教えを忠実に守るものだが、信者以外の多くの人が信じ切れず、異なる宗教や宗派の信者間で争いが起きるという問題点がある。他方、哲学は先人の優れた思想を受け継ぎながらも不備を批判して、思考を展開させるものである。

●まとめと対策

本校の問題は難問でも奇問でもありません。ですから、語彙の学習がきちんとされたうえで、論理的に文章を読み解く力があれば、十分に合格点をとることができるオーソドックスな問題と言えます。少なくとも国語に関しては、正攻法の学習で十分に対応できるでしょう。本校は、確かな基礎学力を持った生徒を求めているのだと思います。短期間で急成長しただけの理由があるように思います。お薦めできる学校の一つです。