●自由に選べる中高一貫校

今日は、中学受験生が中高一貫校を目指している前提でお話を進めていきます。そのなかでも、主に私立の一貫校(大学附属も含む)について記します。

東京都の公立中学校は、区市町村により学校を自由に選べるところもあります。自由選択制、ブロック選択制など、自治体によって異なるようです。ただし、居住している区市町村以外の学校には、原則として入学はできません。なお、当塾のある世田谷区は、学区が定められ、自由に学校を選ぶこと自体が原則としてできません。

一方、私立中学校には学区はありません。自由に選べるのです。小学5年生なら受験まで約1年あります。もちろん自分の現在地=偏差値を知ることは大切ですが、自由に第一志望校を決めましょう。「今の偏差値が60だから開成中学はあきらめよう」などと考える必要はありません。まず目標を決めましょう。本当に行きたい学校を夢見ましょう。

●一貫教育であるということ

中高一貫校は、それぞれの教育理念に基づいてカリキュラムが組まれ、授業が行われ、様々な学校行事が催されます。6年間、同じ環境で過ごすことになります。学校の環境に合えばとても充実した時間を過ごせる反面、合わないときは過ごしにくい日々となってしまうこともあります。ですから、学校選びはとにかく慎重に行いたいものです。

実際に入学してみないことにはわからないことも多いでしょう。また、入学してから様々な変化があることもあるでしょう。ただ、少なくとも学校の雰囲気を知る機会は大事にしておいてほしいと考えます。ですから、学校説明会や学園祭、体育祭などに足を運ぶことをお勧めします。生徒の皆さんの挨拶の様子、生徒同士の笑い声、あるいは校舎を見た時の気が引き締まる思いなど、大切にしてほしいと考えます。多分に感覚的なものもあるでしょうが、幸せな学校生活を送るためには、こういう感覚の声を大事にしたいものです。これらの違いは、決して偏差値の違いだけではないはずです。

また、中高一貫校の特徴のひとつは、高校入試が原則としてないことでしょう。高校入試のための勉強が必要ないということは、多くのメリットがあると考えます。6年間じっくりと勉強できるということがその一つだと思います。しっかりと確かな学力を、時間をかけて養うことが可能になることでしょう(受験がないことで中だるみになってしまうということもあるでしょうが、これは人それぞれだと思います)。

なお、高校受験を意識することなく、例えば好きな作家の小説を読破するなどの時間も取れることでしょう。また、部活はだいたい中体連の試合が終わった段階で引退となりますが、一貫校の場合、試合終了後すぐに高校部とともに活動を始める学校も多いように聞いています。部活に打ち込みたいという生徒には、うってつけの環境となることでしょう。

●どの学校を選ぶのか

さて、実際の受験では、第一志望校をはじめとして、併願校を数校受験することになります。全員が第一志望校に合格できるわけではありません。ただし、どの学校に行ったかで人生が決まるわけでは決してありません。合格した学校に胸を張って入学したらいいでしょう。人生の岐路はこれから何度も訪れます。

そうは言っても大学受験を考えたら、偏差値の高い学校に行ったほうがいいと思われるかもしれません。ただ、「鶏口となるも牛後となるなかれ」と言われるように、超一流校の下位よりも、一つ下のランクの学校のトップのほうが学力は高いと言えるでしょう。

おおざっぱな言い方になりますが、日能研の偏差値で50の学校に入れたら、いわゆる難関大学に入学することは十分可能です。学校のホームページには実績が掲載されています。

このレベルの新宿区のある男子校から、平成31年度には一橋大、東京工業大をはじめとする国公立大には31名、早慶上理には76名が合格しています(既卒を含む)。また、千代田区のある女子校のホームページには、平成30年の卒業生の進路が記され、国公立大には14名、早慶上理ICUに49名が現役で進学しています。確かに難関進学校に比べれば数字は劣りますが、大切なことは、一人一人の力でどうにでもなるということです。

●中学受験の経験を大切に

当然のことながら、受験生の皆さんには自らの選んだ第一志望校を目指していただきたいと思っていることに変わりはありません。ただし、たとえ第一志望校に合格できなくとも、小学生時代にしっかりと学んだという経験は大事にしてほしいと考えます。私の知る限り、中学受験生は、様々なストレスを抱えながらも、元気で明るい生活を送っています。好きなことを一時我慢して受験勉強に取り組んだという経験は、これからの人生で生きると確信します。