●社会は暗記科目なのか

中学受験では、国算社理の4教科の受験が主流です。また、公立高校入試では、5教科が一般的です。このうち、社会について今回は考察してみます。受験生には社会が好きな子もいれば嫌いな子もいますし、得意な子もいればそうでない子もいます。どの子にも共通しているのは、社会は暗記科目だという認識です。確かに、算数や国語よりも覚えておくべき事項は多いかもしれません。

ただし、社会とはその名の通り、社会の仕組みを知ることから始まり、社会でどのように生きていったら良いかを学んでいく教科なのです。地理では、世界や日本の人々がその地理的条件に合わせて工夫をして暮らしていることを知り、歴史では、それぞれの時代の人々が、その時代背景でいかにより良い生活を求めてきたかを知り、公民では、現代社会でどのように生きていくべきかを考えることが重要なのです。

●覚えているだけでは解けない

受験においても、なぜだろうと考える力、自分の考えを述べる力が実際に問われています。ですから、知識があるだけでは解けない問題が必ず出題されます。そして、それに対応できる受験生が合格点を獲得できるといってよいのです。

学校によっては、とても詳しい知識を求めるところもありますが、多くの学校は難関校も含めて、知識が多いかどうかよりも、必要十分な知識をどのように活かしているかを試すことを重視した問題づくりをしています。例えば、図表、グラフ、地図などを読み取る問題が良く出題されます。仮に知識がなくとも解ける問題も数多く出題されます。なぜなのでしょう。学校は細かい知識をたくさん持った生徒よりも、知識を活かす力を持った生徒を求めているのではないでしょうか。

●東京大学の入試問題から考える

このブログの読者の方々は、小中学生ならびにその保護者の方々が中心だと思いますが、 あえてここで、東京大学の地理入試問題を取りあげてみます。知識だけが重要でないことがわかります。

(2012年の問題より)
中国の2008年の農産物(加工品を含む)の輸入額は801億米ドル、輸出額は359憶米ドルである(FAO資料による。なお中国には台湾を含む。ホンコン、マカオは含まない)。


(1)

中国の輸入額上位の農産物には大豆などのほか、パーム油(ヤシ油)、大豆油が含まれる。これら油脂類が大量に輸入されている背景を、2行以内で述べなさい。


(2)

中国では、農産物の輸入額が輸出額を大きく上回っているが、輸出額の規模も決して小さくない。輸出額上位には、農産物のさまざまな加工商品、調理済み食品、冷凍食品などが含まれる。これらの品目が主要な輸出品目となっている背景を、2行以内で述べなさい。

(1)、(2)ともにさほど詳細な知識は求められていません。中国が経済発展により生活水準が向上していること、また、日本などの食品メーカーが安価な労働力を求めて中国に進出していることなどの知識があればいいのです。中学入試レベルでも、日本のメーカーの海外進出は取り上げられるテーマです。知識を駆使し、自分なりに筋道を立てて考え、文章にまとめるということが大切なのです。

正しい解答を作るには、(1)では、生活水準が向上したことによって、調理用のほか、シャンプーや洗剤の原料が必要になったことに気がつくことが大切です。また(2)では、海外企業が進出した際、中国国内で生産された農産物を利用することに着目すればいいのです。

●たいせつなのは論理的に考える力

さて、上述の東京大学の入試問題、解答例は次のようになります。

(1)生活水準の向上や食生活の変化によって食品加工用や洗剤など油脂類を原料とする製品の国内での生産量が増加したため。
(2)低賃金労働力を求め日本など外国の食品会社が進出し、中国産の農産物を利用し輸出向けに生産や加工を行っているため。

東京大学の問題で、1行とはおおよそ30字ですので、60字程度で解答することになります。東京大学は「知識を詰めこむことよりも、持っている知識を関連付けて解を導く能力の高さを重視します」と宣言しているそうです。まさに筋道を立てて考える力、そしてそれを表現する力が求められているわけです。当塾では、国語、社会ともに、このような論理的思考力の育成に力を入れています。これが合格への近道だと考えるからです。