●読解問題こそ解きなおしを

塾などで行われる様々なテスト、解きなおしが大事だとよく言われます。例えば算数や数学ですと、出来なかった問題を、解説や先生の指導をふまえてもう一度解いてみたとき、地力で解けたとします。これにより一つの解法が身につき、次に同様な問題に遭遇した時に、余裕を持って立ち向かうことができることでしょう。社会や理科の場合、できなかった問題は、必要な知識が不足していたことに起因することが多いと考えられます。それならば解きなおすことによって足りなかった知識を学びなおすことができるでしょうし、定着につながることでしょう。ところで、国語はどうでしょうか。漢字や語彙、文法の問題は、間違えたということは、知識がなかったということです。解きなおしや繰り返しての復習によって、次は間違えることがなくなるはずです。そして入試で同じ問題が出てもあわてることがなくなります。解きなおしの成果です。

さて今日のテーマは、国語のなかでも読解問題の解きなおしについてです。私は、はっきりと国語の読解問題こそ、きちんと解きなおしをすべきだと考えています。たしかに模擬試験や過去問などで取りあげられた文章が、そのまま入学試験に出題されることはまれでしょうし、たとえ同じ文章がとりあげられても、設問は異なるものになるでしょう。ですから、解きなおして解答を確認したり、覚えたりするだけでは、確かに意味はないです。しかし、読解の問題を解きなおすこと、どのように正解に辿り着くのか、その解法手順を確かめることには大きな意味があります。読解問題の解法を習得することで、題材や設問が異なったとしても、同じ解法を応用して他の問題も解けるようになるのです。

多くのお子さんは、記述問題、書きぬき問題、選択肢問題を問わず、解きなおしではなく、答え合わせをして終わっている場合が多いことを実感しています。少し言い方はよくありませんが、勘で選んだ選択肢がたまたま当たったから良かった、記述問題も根拠なく書いたら結構部分点が取れたから、今回は運が良かったということが多いと思います。そして、なぜできたか、なぜできなかったを検証することなく、そのまま終わってはいないでしょうか。これは、算数や数学にたとえれば、例題を解けずに放置していることと同じです。題材が異なる類題が出題されたときに、自信をもって臨むことはできません。点数は運任せです。国語の点数が安定しないお子さんは、おそらくこのような場合が多いのではないだろうかと考えます。

運がいいときだけ、いい点数が取れる、これでは、真の実力とは言えません。なぜ、間違えたか、なぜ正解したか、納得するまで解きなおすことです。これは、一人で行うのは困難な場合も多いはずです。納得いくまで、信頼できる先生などに聞くこと、教えてもらうことも大切です。国語はとりわけつまずく箇所が人によって違います。どこで間違えたのか正しく知ること、そして改めて正解にたどりついた道筋を、自分でしっかりと確かめ、他人に説明できるくらいになることです。これは、とても有効な学びになります。今日から始めましょう。この春受験の生徒さんも、遅すぎるということはありません。始めなければ、何も変わらないのです。

●入試問題を解きなおす

さて、今回は、比較的難問の記述問題を一題、解いていこうと思います。道筋がわかれば
合格点が取れるのです。2020年度の桜蔭中学校の大問一からの引用です。

問四
傍線部A「コペルニクス的な転回」とはどういうことですか。この表現で筆者が言おうとしていることを具体的に説明しなさい。

<注:傍線部を含む段落は下記>
GPSを使うと、本来、旅において最も難しいはずの作業が最も簡単になるという逆転現象が発生する。それは<前よりも便利になった>という次元をはるかに超える、人間はなぜ冒険をするのかという本質を侵しかねないコペルニクス的な転回だ。

「コペルニクス的な転回」のこの文章における意味を問う問題です。コペルニクス的な転回とは、天動説から地動説に変わったように、考え方が180度変わることを意味します。この言葉の意味は知らなくとも、十分に解答することができます。この時点で脱帽する必要はないということです。「転回」が「回って向きをかえること」だと理解できていれば大丈夫です。

さて、この問題では、傍線部が一文の一部分になっています。この場合は、傍線部以外が重要であるというのが読解の基本です。コペルニクス的な転回が、「<前よりも便利になった>という次元をはるかに超える、人間はなぜ冒険をするのかという本質を侵しかねない」ほどの転回だということがわかります。

なお、この一文の冒頭には、「それは」があります。この指示語が何を指しているかを見つけます。これは、前文の「GPSを使うと、本来、旅において最も難しいはずの作業が最も簡単になるという逆転現象」だということは、容易に読み取れるはずです。

ここまでを整理すると、「GPSの使用によって生じることは、<前よりも便利になった>という次元をはるかに超える、人間はなぜ冒険をするのかという本質を侵しかねない、旅において最も難しいはずの作業が最も簡単になるという逆転現象」が、コペルニクス的な転回だということです。

一言でいえば「GPSを使うことになったのは、冒険の本質を侵しかねない大きな変化である。」となります。ここまで解答できれば、筆者のイイタイコトは捉えていますので、部分点は取れるでしょう。解きなおしではさらに、設問に「具体的に説明しなさい。」とありますので、具体的な記述を本文中から探していくことになります。

これからは、GPSを使う前と後で、探検や冒険がどう異なるのか具体的な記述を見つける作業に入ります。傍線部の直後に”なぜ私たちが探検や冒険をするのかというと、それは行為のプロセスの中にある<自然との関わり方>に秘密があるからだ。”とあり、ここから著者の考えが書かれ始めます。読み進めると登山の例が続きます。

働きかけをして山と関係性を構築することで、登山者は山から肯定され、今その瞬間、そこに自分が存在しているという感覚を強く持つことができる。

とあります。この後、しばらく登山、極地探検、外洋航海などの探検や冒険における自己存在確認についての記述が続きます。”~つまり山からきわめて実体的な存在を与えられることに登山の最大の魅力はあり、逆にそこにしかないといえる。”という記述からも、自分がそこに存在しているという感覚こそが、探検や冒険の本質であることがわかります。これが、GPSを使う前です。

続いて、GPSを使うことによる変化の記述を見つけます。一連の探検や冒険の記述に続いて、次の記述が見つかります。

ところがGPSを使うと、この自然への働きかけと関与領域が極端に狭くなってしまう。地図読みや天測にはあった外の世界を読みとるという働きかけがない状態で、いきなり百パーセントの正解が与えられるので、外との関係が薄くなり、自然から存在が与えられているという感覚も弱まってしまうのだ。

ここまで探し出せば、設問の「具体的に説明しなさい。」を満たす要素は整えたことになります。今一度整理し、解答に必要な要素を確認します。

①GPSを使うことになったのは、冒険の本質を侵しかねない大きな変化である。
②探検や冒険をする際、自然に働きかけをして関係性を構築することで、自分が存在しているという感覚を強く持つことができる。
③GPSを使うと、外との関係が薄くなり、自然から存在が与えられているという感覚も弱まってしまう。
この三点をまとめれば、次のような解答が導き出されます。

(解答例)
GPSを使うことになったのは、冒険の本質を侵しかねない大きな変化である。探検や冒険をする際、自然に働きかけをして関係性を構築することで、自分が存在しているという感覚を強く持つことができるのが冒険の本質である。しかし、GPSを使うと、外との関係が薄くなり、自然から存在が与えられているという感覚も弱まってしまうのである。

この問題は、上記のような道筋で正解にたどりつくことができます。過去問を解く際、問題を解けなかったこと自体を大きな問題とは捉えずに、この機にしっかりと解き方を解きなおしで学ぼうという意識で臨んでみてはいかがでしょうか。必ず国語の問題を解く力がつくはずです。同様の記述問題が出題されたときに応用ができる学力であると言えるでしょう。解き直しをせずに放置しておくことは、もったいないことです。国語の読解問題は、解きなおしをすることをおすすめします。しっかりと問題文と設問を精読し、納得いくまで考えることが大切です。当塾では、解きなおしを重視した授業を行っています。

さて当塾は、年明けも毎日開塾しています。体験授業へのご参加も歓迎したします。対面授業では、換気、消毒等を万全にしてお待ちします。また、オンラインでの体験授業も実施しています。

本年もよろしくお願い申しあげます。