●令和三年度の都立高校入試について

終業式、卒業式を終え、お子さんは新年度への準備期間を過ごしていらっしゃると思います。短い期間ですが、学校はお休みです。普段できていないことが出来る時期かもしれません。充実した日々を過ごされることをお祈りいたしております。さて、このブログでは高校入試のことはあまり取りあげてきませんでした。これからは、折々で高校入試についても書いていこうと考えています。令和3年度の東京都高校入試は2月21日に行われ、3月2日に合格者の発表が行われました。ご存じの方も多いと思いますが、例年と異なり新型コロナウイルス感染症との関連で、各教科で出題する範囲から除く内容が定められました。当塾で授業をおこなう国語では、「中学3年生の教科書で学習する漢字」が、社会では、公民的分野のうち、『私たちと経済』の「国民の生活と政府の役割」と『私たちと国際社会の諸課題』が該当しました。全員が同条件ではありますが、あくまでも私の印象としては、社会において学習が後手に回りがちな公民の一部が除外されたことは、受験生の心理としては、プラスに働いたように思います。今日のブログでは、国語(共通問題)を見ていくことにします。

●基礎的な力があれば確実に解ける国語

今回の問題は、前年度と同じ構成で出題されていました。大問が五問の構成です。国語は、ここ数年平均点が上昇しており、令和2年度入試の平均点は81.1点でした。全受験者の平均がこれだけの高得点ですから、難関校では満点に近い点数が求められることが想像できます。令和3年度の入試は、反動で難化するとの予想もあったようですが、実際の問題を見た限り、前年度に比べ、さほど大きな難化ではなかった印象です。順番に確認していきます。大問1と2は漢字の読み取りと書き取りで、それぞれ五問ずつ出題されました。大問2の書き取りは、次の問題が出題されました。

(1)私の住む町は起伏にんだ道が多い。
(2)山頂のさわやかな空気を胸いっぱいにう。
(3)コンサート会場でピアノのドクソウを聴く。
(4)バスのシャソウから見える景色が流れていく。
(5)毎日欠かさず掃除をし、部屋をセイケツに保つ。

一問につき2点の配点で、全部で20点です。基礎的な問題ですのでこれは全問正解したいところです。大問3から5が読解問題です。大問4にある条件作文を除けば、すべて選択問題です。大問3は物語文です。織物を学ぶ高校生が主人公です。文章自体が難解ではなく、主人公を中心にした登場人物の心情変化をていねいに追っていけば、難しい問題ではありません。大問4は、「懐かしさ」をテーマにした論説文です。これも正しい読解法を身につけていれば、決して難しい問題ではありません。問5は、「方丈記」についての対談の一部が問題になっています。一部に古文が引用されていますが、現代語訳がありますので、特別な古典の知識は要りません。設問自体、標準的なものでした。いずれこれらの問題については、分析を行う予定です。じっかりと基本的なことを学び、正しく読解ができれば、恐れるに足らずです。

●大切な二百字作文

さて、東京都の国語の問題では、例年大問4で、二百字以内の作文が出題されています。このたびは、次の問題でした。

大問4 問5
国語の授業でこの文章を読んだ後、「自分の記憶の『拠りどころ』となるもの」というテーマで自分の意見を発表することになった。このときにあなたが話す言葉を、具体的な体験や見聞も含めて二百字以内で書け。なお、書き出しや改行の際の空欄、、(読点)や。(句点)や 」(かぎかっこ)などもそれぞれ字数に数えよ。

この問題、配点は10点と大きく、これの成否は合格に大きな影響を与えると考えられます。作文の苦手な子は、もしかすると手がつけられないかもしれません。逆に言えば、この作文対策をきちんと行っていれば、安心して問題に取り組み、高得点をあげることができるわけです。新中三生の皆さんにとっては、これから対策してからでは遅いということはありません。ただしのんびりとは構えず、今から準備を進めていってほしいと思っています。来年度、当塾のブログでは、都立高校入試対策は重視していく予定です。

今回は、最初ですので、この作文は決して特別難しいことが求められているわけでないことを、確認していこうと思います。

●どういう解答が求められるのか

実際にどのような解答が正答となるのか、いくつかヒントがありますので、それを確認していきます。「令和3年度都立高等学校入学者選抜 学力検査問題及び正答表」には、「(参考)採点のポイント」があります。ここには、二百字作文採点のポイントが記されています。ここには書くべきことが記されています。これにしたがって書くことが求められるのです。下記は、令和3年度のものですが、これ以前のものも、テーマ以外は全て同じです。

〇テーマ「自分の記憶の『拠りどころ』となるもの」に即した自分の意見、主張が適切に書かれている。

〇本文中の筆者の主張を的確に捉え、その主張を踏まえて、文章が適切に書かれている。

〇自分の意見、主張の根拠となる具体的な体験や見聞について、適切に書かれている。

この三つです。このポイントに則して文章を作っていけばいいのです。これは練習を重ねておけば十分に対応できることです。次にこの問題の正答例を見ながら、これらのポイントをどのように反映したものになっているのかを確かめてみます。

(一段落)
 私にとっての記憶の拠り所となるものは、近くの図書館のいすと机です。幼いころは毎日通い、わくわくしながら本を読みました。あの読書体験が私の好奇心の原点です。今そのいすと机を見ると懐かしく思い出します。
(二段落)
 懐かしさは、自分を肯定し、気持ちが未来にひらかれる感情だと筆者は述べています。私は、夢中で読書したころを振り返り、改めて自分の知的好奇心の原点を大切に思いながら、将来の夢に向かって努力しています。

一段落では、「具体的な体験や見聞」が四文で構成されています。二段落では一文目で「筆者の主張」が記され、二文目で「自分の意見、主張」が書かれています。このように三つの要素を当てはめることができればいいのです。高いレベルの文章力は必要とされていません。また、特別の体験や主張がなければ書けないわけでもありません。求められる内容について、論理的に間違いなく記すことが大切なのです。過去問などを活用して練習を重ねることが効果的な対策になります。新年度のブログでは、何度か具体的な対策について記していく予定です。

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