●教養としてのことわざと慣用句

普段の生活のなかで、自分からことわざや慣用句を使う場面はあまり多くないかもしれません。ただ、誰かが話したのを聞いたり、本で読んだりした時は、その意味を理解しておきたいものです。とりわけ会話のなかでことわざや慣用句が使われた時は、きちんと対応できるようにしておくといいでしょう。

「ことわざ」は、人間の長い生活のなかから生まれた知恵です。暮らしていくうえでの教えや真理、喜びや悲しみ、愚かさなどが、短い言葉のなかで表現されています。ことわざは、私たちのくらしを豊かにしてくれるものです。会話や文章のなかでことわざが出てきた時、自分のことわざに関する考えを言うことができたら、また、会話の途中でことわざを自ら交えることができたら、相手との関係を縮め、信頼を得ることにつながることでしょう。

「慣用句」もことわざに似ています。ただし、教訓や生活の知恵を含まない点がことわざとの違いです。慣用句は、二つ以上のことばが一緒になり、ある特別な意味を表すことばです。「うでをみがく」、「口がすべる」などがあります。「ごはんを食べる」、「歯をみがく」などとは異なり、一つ一つの言葉の意味と全体の意味は異なったものになります。「うでをみがく」は、文字通り腕をゴシゴシと磨く意味ではなく、「うで」は「腕前」、「みがく」は、「ますますよくする」で、「熱心に練習する」という意味になるわけです。

●「ことわざ」や「慣用句」の学び方

「ことわざ」や「慣用句」を生活のなかに取り入れることで、私たちは、より楽しく豊かに過ごすことができるようになると言ってよいでしょう。教養として、小中学生のうちから身につけておきたいものです。なお、以前のブログで紹介した「四字熟語」同様に、中学入試や高校入試では頻出の問題です。学校がなぜこのような問題を出題するのか、これには、言葉を学ぶ意欲があるのか、きちんと学び知識として定着しているのかを見るねらいがあるようです。例えば、実践女子学園中学校では出題のねらいの一つとして、「言葉に対する豊かな知識や感性をもっているか」をあげています。学校が求める力を育んでおくことが大切なのです。今回は、「ことわざ」や「慣用句」の学び方について考えていきます。

以前のブログで取り上げた四字熟語と同じで、ことわざや慣用句は、闇雲に覚えても苦手意識が先行するだけです。ですので、理解をしてから覚えることが大切です。一例をあげます。「せきを切る」という慣用句があります。この言葉の意味は、「おさえられていたものが、こらえきれずにどっとあふれでる。」です。それでは、この「せき」とは何なのでしょうか。この問題を出された時、子供たちの答えはそれぞれ異なります。風邪をひいたときに出る「咳」と答える子、今座っている「席」と答える子、関所の「関」と答える子、様々です。正解は、「川の流れを止めたり、調節したりする所。川や池の流れ口につくる。」です。漢字では、「堰」です(この漢字は、常用漢字ではありません)。

●応用できる知識を身につけること

さて、「せきを切る」の意味を覚えていれば、確かにこの慣用句の意味を問う問題は解けるかもしれません。ただし、あまり応用力のある知識を身につけたとは言えません。このせきがどういうものかを辞典などで調べて知っている子は、「せきを切る」の意味について、次のように説明することができます。「川の流れを止めている場所をずばっと切ったら、水が勢いよく出てきます。だから、おさえられていたものこらえきれず、あふれ出てくるという意味です。」と言えるのです。慣用句やことわざには、そのことばが使われ始めた由来が必ずあります。「なぜこの言葉がそんな意味になるのか」を知っている子は、無理に暗記しなくとも自然にことばが身についてくるのです。そして、こういう子には応用力があるのです。「せき」が何かを調べた子は、例えば「せき止める」という言葉を見た時に、自分で身につけている知識を応用して、「通れないようにふさぐ。さえぎって止める」という意味だということを類推することができるのです。本来、言葉の学習は、無味乾燥な暗記ではなく楽しく行えるものであると思います。また、そうであるべきだと思います。そうして身につけた知識は、子どもにとって生きた知識であり、知恵となっていくことでしょう。ことわざや慣用句は楽しみながら学ぶことができます。また、保護者の方が勉強のサポートをしやすい学習内容です。ふだん、お子さんと接する機会の少ないかもしれないお父さんが、会話をするきっかけをつかむことになるかもしれません。ことわざや慣用句についてのブログは後編に続きます。ここでは、具体的な学び方を掘り下げていくことにします。