●新年度を迎えて

新年度になりました。新しい学校に進まれた方、進級された方、それぞれでしょう。本年度が、実りあるものになりますようにお祈りいたしております。当塾は、新しいお子さんもお迎えし、新たなスタートを切ったところです。お子さんの生活が充実したものであることが、私の願いです。

当塾のお子さんは、様々な目的を持って学ばれています。作文や論文、あるいは発表が上手にできるようになりたいと考えているお子さんなども、多くいらっしゃいます。ただし、一番多いのは受験対策でいらっしゃるお子さんたちです。高校受験や大学受験を目指すお子さんの場合、すでに勉強することが毎日の習慣となっていたり、種々受験に関わる情報を探すことができるようになっていたりと、保護者があまり関与しなくとも、独力でできることが増えてきています。

一方、中学受験では、多くは小学4年生ごろから本格的な受験勉強をスタートさせます。9歳~12歳の小学生にとっては、毎日勉強を続けなければならないこと、定期的にテストを受けることなどは、とても高いハードルとなります。また、お子さんの多くにとっては、人生で初めての受験となります。これも大きな負担感を与えるものでしょう。中学受験では、お子さん自らが学習計画を立てたり、受験に向けた生活習慣を作り出していったりすることは困難です。学習指導自体は塾などに委ねるとしても、受験のための環境整備、情報収集は保護者の役割といっていいでしょう。今回は、中学受験生と親の関係について、少し述べていこうと思います。

●大切な保護者の役割

以前ここで述べたこともありますが、当塾の保護者の方々と接して、いつも思うことがあります。皆さま、とても熱心です。それは、お子さんの将来を真剣に考えているからです。その姿に、私はいつも敬意を持っています。無私の愛情を強く感じるからです。この愛情が根本にあるわけですから、周囲の人間が何も心配することはないと思います。ところで、私は長男の中学受験のとき、本人と母親任せでほとんど何もしていませんでした。ですので、今ならこうしてみたいと思いつつ、記していくことにします。

何事にも共通することですが、まずは健康が大切です。体の健康では、規則正しい生活習慣が大事ですし、栄養や睡眠時間をきちんと確保すべきです。あとは、やはり家族が健康でいることですね。これは受験期に限った話ではありませんが、家族の誰かの具合の良くない時は、精神的に不安定になりがちです。また、もちろん、流行性の風邪などの場合、うつしてしまうこともあります。

また、体の健康とともに、こころの健康も大事です。子ともは、私たちおとなが思っている以上に、様々なことにプレッシャーやストレスを感じているように思います。ときには、それを発散するがごとく、大声で泣き出したりすることもあります。私は児童心理の専門家ではありません。何ともはっきりしたことは言えませんが、親の前で大声で泣くということは、親に対する信頼感のあらわれのような気がします。ですので、これ自体は決して良くないことではなく、これを機に、少しだけ休んでみるとか、気分転換をしてみるとかも必要になるかもしれません。また、こういうことに気づき、手を差し伸べることができるのは親しかいないのではないかなと、私は思っています。

さて、お子さん自身がモチベーションを高く維持しつつ勉強を進めることができれば、それに越したことはありません。ただし、中学生や高校生にとっても、これは易しいことではありません。小学生ならば必ず親のサポートが大切です。毎日の様子を見ていれば、あれこれと小言を言いたくなることもあるでしょう。ただし、あまり口うるさく言うことが、逆にお子さんのやる気を失くすことにもつながることもあるので要注意です。やはり、「やればできる」と本人が感じ、自己肯定感を高めることができるようにしたいものです。褒めること、声をかけてあげること、とても大切に思います。「先週できなかったこの問題ができるようになった、よく頑張ったね。」、「今日はいつもは帰ってすぐやるゲームを我慢して、勉強に熱中していたね。」などと、具体的に話すのがいいと思います。ちゃんと見てくれているんだという安心感を与えることも大事に思います。

新しいことに取り組むことは、誰もが不安です。中学受験に臨むお子さんたちも、もしかしたら口や態度にはださないかもしれませんが、不安を抱えていると思います。先が見えない不安です。試験が終われば、実りある学園生活が待っているのだということを、伝えてあげたいものです。今、目指しているそれぞれの学校に良さがあること、合格したら、しばし我慢していたことが思う存分できることなど、明るく、上を向く気持ちになるような話を折々でなさってみてはいかがでしょうか。親の気持ちは汲んでくれることと思います。

●タイムプレッシャーによる充実した学び

少し話題を変えます。このブログの読者は、小中高の生徒の皆さん、保護者の方々が大半だと思います。算数や数学の計算問題、あるいは英語や国語の読解問題を自分で勉強するとき、制限時間を決めてやっていますでしょうか。以前もご紹介したことのある「脳を活かす勉強法」で、脳科学者の茂木 健一郎さんは、自分の作業に制限時間を設けることを勧めています。茂木さんは、これを「タイムプレッシャー」とよんでいます。時間は他人が決めるのではなく、自分で決めることが大切だそうです。たとえば、算数の問題に標準時間が10分と出ていたら、あえて8分と決めてやってみるということです。国語の読解問題、前回15分で解いたら、類題を10分で解いてみようということです。これ以上は早くできないという限界を超えてやろうとすることで、人間の能力はどんどん上がるとのことです。なおこれは強制されてやるのでは意味がなく、やる気や楽しむ気持ちがとても大切だそうです。時間を測るために使う道具として、茂木さんは、キッチンタイマーを使うと良いと言っています。安価ですし、勉強専用に使うのも購入するのもいいかもしれません。ちなみに当塾でも、生徒さんの机の前には、いつもキッチンタイマーを置いています。お子さんが時間を決めています。私が制限時間を決めるのではありません。生徒さん一人ひとりが、時間を決めて学びに取り組んでいます。ご家庭でも、お子さんの様子をみながら、「タイムプレッシャー」を試してみるのもいいと思います。きっと楽しんで取り組むことでしょう。

勉強のやり方には様々なやり方があり、「学問に王道なし」であると思います。しかし、科学的に見て正しいと思われること、効果があると言われていることなどは、できる限り学びに取り入れることが大切ではないかと、私は思っています。これからも折々で勉強法を紹介していくつもりです。もし取り入れられそうなものがあれば、試してみてください。

●親子関係は取りあげていきます

今回は、中学受験における親子関係を中心に話を進めてきました。このテーマは今回だけでは語れないこともあります。ほんとうに色々な側面があると思うのです。これからも時々取りあげていくことにします。

当塾は、前述のとおり、中学受験や、高校受験、大学受験を目指している方が多く在籍しますが、これらの受験専門の塾ではありません。作文や論文が上手になりたい人、プレゼンテーションの力を高めたいと考えている人などもいらっしゃいます。大人になられた後、専門学校の受験をされ、そのとき国語や論文の学びが必要だった方が受講されていたこともあります。国語にお悩みの方は、どなたでもご相談ください。お待ちいたしております。