●本校の進学実績について

社会の入試問題を研究する前に、本校の進路状況を確認しておきます。2020年には、169名が本校を卒業しています。国公立大学では、東京大学の合格者数が最も多く10名(うち現役7名)、次いで一橋大学に6名(うち現役5名)が合格しています。国公立大学の合格者は全体で39名(うち現役28名)でした。私立大学では早稲田大学の合格者が最も多く77名(現役は62名)でした。慶應義塾大学には47名、上智大学には28名、東京理科大学には25名が合格しています。なお、医学部の合格者数は既卒者を含めて65名でした。数字から判断するのみですが、国公立大学よりも有名私立大学の合格者の多さが目立ちます。また、医学部志向も感じられます。いずれにしても、女子御三家の一つである本校、進学校としての実績も確かなものであるといえます。入学時の偏差値は、日能研によれば65です。それでは、社会の問題を見ていきましょう。

●基本的な知識を確実に

社会は配点が50点、解答時間は30分です。国算がそれぞれ100点、理社がそれぞれ50点の配点ということになります。例年大問が三題、地理、歴史、公民から一題ずつ出題されています。本校の社会は、基本的知識を問う問題が中心です。ただし、一問一答式の暗記学習だけでは合格点に達することは困難です。いくつか例をみていくことにします。はじめに、2018年度の大問1から問2と問9をとりあげます。

大問1
次の図①~⑩は、日本の都道府県のうちのいずれかのものです。図を見て、下の問に答えなさい。なお、図の縮尺はそれぞれ異なり、方位はかならずしも正しくありません。島は一部省略しています。

<注:実際の問題には、図①~⑩として、下記の都道府県の白地図が入る。>

①新潟県②山形県③東京都④青森県⑤長野県⑥愛知県⑦熊本県⑧北海道⑨千葉県⑩宮城県

問2 上の図の都道府県に流れる川のうち、日本で一番長い川よりも流域面積が広く、流域面積が日本で一番広い川よりも長さが短い川を答えなさい。また、その川が流れる都道府県を上の図から選び、番号で答えなさい。

この問題は、正確に設問を読んでいく必要があります。必要な知識は、川の長さと流域面積、ともに上位三河川です。これは、中学入試では必須の事項です。川の長さは一位から、信濃川、利根川、石狩川の順で、流域面積は、利根川、石狩川、信濃川の順です。求められている知識は標準的なものですが、問題文を正しく読み、何が求められているのかを、正確に捉えることができないと正解できません。文章を正しく読む力=国語力も求められています。正解は、「石狩川 番号 ⑧」です。

問9 図③や図⑥には、日本を代表する貿易港があります。日本の輸入品は、加工貿易がさかんに行われていた頃と比べると、機械類が増えて、現在ではこれが輸入品の第1位になっています。機械類の輸入が多くなった理由を二つあげ、説明しなさい。

この問題では、理由を二つあげることが条件です。図③は東京都で東京港、図⑥は愛知県で名古屋港ですが、これは解答に直接は関係がありません。理由となる二つは、中学受験における必須事項です。機械類の輸入増を「日本企業の海外生産による逆輸入」と「新興工業国からの輸入」というキーワードで押さえれば、正解にたどり着くことができます。
後は、過不足なくまとめればいいわけです。「日本企業が海外生産を行い、逆輸入が増えたから。また、中国や東南アジアなどで工業化が進んたことにより、輸入が増えたから」
などが正解となります。

続いて、2017年度の大問2の問8を見てみましょう。日本における政治の役割について問う大問のうちの一つです。

問8 文章中の二重下線部について。

<注:実際の問題の二重下線部は、次の通り。「国会で法律や予算を決めるときには、採決をするまでの間に十分に話し合いが尽くされることが大切です。」>

十分な話し合いをせずに採択が行われることには、どのような問題がありますか。次にあげた日本国憲法第43条の条文と関係させて説明しなさい。
「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」

この問題は、正確に問題を読んでいくことが大切です。条件として、「日本国憲法第43条の条文と関係させて」とあります。「国会で十分に話し合う」ということは、日本国憲法第43条の「全国民を代表する選挙された議員」と関連づければ、「十分に話し合うことで、国民の意見が反映されやすくなる。」ということが導き出せるはずです。今回は、「~どのような問題がありますか」という設問ですから、その視点で解答を作ることになります。順序良く筋道を立てて考えていけば、正解できる問題です。「国会議員は、全国民を代表する立場なので、審議が不十分だと、様々な国民の意見を取りあげたことにならない。」などが正解となります。

●合格するために

本校の入試問題では、それぞれの設問に、リード文、統計資料、歴史の史料、図表などが多数用いられています。それぞれから読み取れるものと、学習で身につけてきた知識を結びつけて考えて、正解を導き出していく力が求められます。そのためには、テキストを丸暗記するような学習ではなく、様々な問題演習を通して、筋道を立てて考え、答えを見い
だす力の育成が大切だということです。なお、中学受験のレベルを超える知識は不要です。ただし、正確な知識として定着させておくことが肝要です。

中学入試としては、相当高いレベルが求められるのが、本校の国語です。一方、社会は決して難問ではありません。正確な知識があり、問題が何を求めているのかを正しく理解して解答すれば、合格点に達することでしょう。7割は正解したいところです。ところで、
本校の社会は配点が50点と国数の半分です。だからと言って、力を抜くことは当然のことながら禁物です。社会でも取れるだけ点を取りましょう。どの教科の1点も1点には変わりありません。