●新年度になりました

新入学、進級のシーズンです。この塾で学んだお子さんたちからも、入学式のようすのお写真などをたくさんいただきました。

おめでとうございます。これからの学園生活が実りあるものでありますことを、お祈りいたします。入学した学校でどのような生活を送るか、なにを学ぶのかが大切だと私は思っています。合格までも長い道のりでしたが、これからの学園生活のほうがより長く大切です。たとえ、入学した学校が第一志望校ではなかったとしても、人生において大きな問題ではありません。

当塾には中学受験、高校受験、大学受験を目指すお子さんも多く在籍されています。人生の過程でこれらの経験がかけがえのないものであると、私は思います。当塾のお子さん、皆さん本当によく学んでいます。その姿勢がこれからの人生の大きなプラスになると思うのです。そして当然志望校合格のためのサポートを、当塾は続けます。ただし、結果だけが全てではないと思うのです。

中学受験で終わりではありません。もちろん大学受験で終わりでもありません。社会に出て働いたり、家族を持ったりと人生はとても長いのです。そういう気持ちを持つことが大切に思います。

さて塾生や保護者の方々には、よく私の家族の話をします。たまにはブログでもふれさせてください。先日、大学四年生の長男、ある会社から内定をもらいました。その会社の採用方針にこのようなことが書かれていました。

当社の採用方針は、「完全ポテンシャル採用」です。
志望度の高さや企業理解の程度ではなく、あくまで「皆さんがこの会社で活躍できる人材なのか」を確認させていただきます。当社からだけでなく、皆さんからも「当社が自身にとってベストな環境なのか」を見極める場にしてください。

会社勤めをしていたときには、私は社員採用の仕事もしていました。この会社の方針にとても賛同します。今どれだけ知識や技能があるか、今何ができるかなどが大切なのではなく、これから何ができるのか、その力があるのかどうかが問われるわけです。

この考えは、入学試験にも当てはまると考えます。それぞれの学校は、その学校で学ぶ力がある生徒を募集しているわけです。たしかに受験勉強では知識を増やしたり、解法を学んだりすることがもっともたいせつなことです。その際、たとえば記述問題が多い学校ならば、この学校は自分の意見をはっきりと相手に伝える力を求めているのだなと感じ取るとよいでしょう。加えて志望校に合格したら何をしたいのかを、自分なりに考えておくことが大切です。自分の適性にあった、偏差値だけではない学校選びをおすすめします。

くりかえしになりますが。受験から入学にいたる過程は、長い人生のなかの一部にすぎません。ですが同時に大切な経験の場でもあります。当然のことながら合格を目指して努力をつづけることが大切です。当塾では、その前提で生徒さん一人ひとりと接しています。

●随筆文の読み方

さて、国語の入学試験では論説文と物語文の読解問題が一題ずつ出題されるケースが多いのが現状です。ただし、そのどちらかが随筆文に代わることもあります。今回は随筆文の読み方を確認しておくことにします。

随筆文は創作である物語文とは異なり、筆者自身の体験や話題となる物事が書かれたものです。そしてそれに対して、筆者が何を感じ、考えたかが書かれています。ここには当然のことながら筆者の主張が含まれます。

体験や話題の部分と、筆者の考え、気持、主張の部分から随筆文は構成されています。話題が何かを捉えたうえで、筆者の心情を捉えていくことが大切です。実際に筆者の心情や心情変化が問われる場合が多いからです。

随筆は、「私は」などのように一人称で語られます。心情は地の文ではっきりと書かれることが多いので、つかみやすいのではないでしょうか。もちろん動作や表情、言動からも心情をつかむことができます。これは物語文と同じです。

●雙葉中の入試問題より

実際の入試問題を見てみましょう。2018年度の雙葉中学校、大問1です。著者の馬具職人との交流を描いた文章です。

問六 傍線部④「本来の馬具の仕事をしてもらうことはできないでしょうか。」とありますが、筆者はどういう仕事をしてもらいたいと考えていますか。次のア~エから選び、記号で答えなさい。
ア 馬につける用具を現代の仕事に活かす仕事
イ 帆布を用い、じょうぶで使いやすい道具袋を作る仕事
ウ 人と馬を再び結びつける仕事
エ 使いこむほど味わいの出る皮革製品を作る仕事

この問題ではまず「本来の馬具の仕事」とは何かが問われます。これは本文全体に関わる内容でむずかしいですから、他の手がかりを探してみます。この場面での筆者の心情を捉えるのが良さそうです。傍線部の直後に次の記述が見つかります。

従来の馬具でなく、その技術を現代の生活に生かすために。できるなら、かつて人と馬をつないだ馬具のように、使い込むほどに味わいのある手仕事を……。願わないではいられませんでした。ふと奥の戸棚を見ると、頑丈そうなカバンがありました。今は使われなくなった銀行員の集金カバン……。そう、バッグができる!

解答のヒントが見つかりました。従前の馬具でなく、その技術を現代の生活に生かすために。できるなら、かつて人と馬をつないだ馬具のように、使い込むほどに味わいのある手仕事を……。願わないではいられませんでした。ふと奥の戸棚を見ると、頑丈そうなカバンがありました。今は使われなくなった銀行員の集金カバン……。そう、バッグができる!「使い込むほどに味わいのある手仕事を……。」です。選択肢と見比べれば正解がエであることがわかります。

傍線部をしっかりと読む、傍線部を含む一文を読む、そこにヒントがなければその直前、直後を読むことです。今回はこれで正解できました。それでもわからなければ傍線部を含む段落全体を読む、前後の段落を読むことで多くの問題が解けます。設問で問われていることと同じ場面の記述を、しっかりと読むことが大切です。

学校によっては、随筆文が出題されやすい学校もあります。筆者が主人公であることを念頭に、その心情を捉えることを大切に読み進めることが大切です。もちろん、論説文や物語文の学びで培った解法を生かすことができます。決して恐れることはありません。