●記述問題に取り組む
国語の入学試験における記述問題には、苦手意識を持っている受験生が多いようです。記述問題は、大きく二種類に分けられます。一つは問題文の内容を材料に記述するものであり、これが主流です。もう一つは、問題文をふまえながら自分の言葉で記述するものです。「~あなたの考えを述べなさい。」などと問われるものです。これが出題される学校は、限られています。今回のブログでは、前者の問題文の内容を材料に記述するものを取りあげます。多くの受験生に共通する悩みだと考えるからです。
記述問題だからと言って特別の解き方が必要なわけではありません。設問で何が求められているのかを正確に把握して、その答えを問題文から導くのです。選択肢問題、抜き出し問題と同じなのです。自分で最初から考えて解答を作り出すのではなく、問題文中から答えを探すのだと考えておきましょう。
どの問題形式であろうとも、出題者が本文を正確に読解できているのかを試していることに変わりはないのです。選択肢は正しいものを選択肢から選んで答える、抜き出しは正しいものを本文から見つけ出す、記述は自分で正解を書くの違いがあるだけです。いずれの問題でも、解答の手がかりとなる箇所を正しく探し当てることにより、正解が導き出せるのです。
論説文ならば筆者の主張を正確に捉える、物語文ならば主人公の心情変化を理解するなどの読み方ができている受験生ならば記述問題も「恐れるに足らず」です。実際に出題された問題を題材に、どう解いていくかを確認していきましょう。
●記述問題の解き方(論説文を例に)
ここでは聖光学院中学校2024年度(第一回)大問四の問六を解いていきます。
問六
傍線部⑤に「二つの人格が相互に等しい愛と尊敬とによって結合する」とありますが、それはどういうことですか。六十字以内で説明しなさい。
この問題は、記述問題の頻出問題である「言い換え」を求めるものです。傍線部をわかりやすく言い換えて説明することが、求められているのです。こうした問題は、必ず文章中に答えの手がかりがあります。その箇所を見つけ、それを材料にして解答を作り出していくことになります。
傍線部をより正確に把握するために、傍線部ならびにその前後(ここでは傍線文を含む段落)を確認しておきます。
カントによれば道徳的友情は、こうした、引力としての愛と斥力としての尊敬が均衡することによって、成立する。彼は言う。「友情(その完成性においてみられた)とは、⑤二つの人格が相互に等しい愛と尊敬とによって結合することである」。これこそカントの考える理想的な友情に他ならない。
ここを読めば、傍線部はカントのいう道徳的友情のことを指していて「引力としての愛と斥力としての尊敬が均衡することによって、成立する」を言い換えたものだであることがわかります。そこで「引力としての愛」と「斥力としての尊敬」とは何かを本文中から見つけることになります。この二つがキーワードですので、これらについて記されている箇所を見つければいいのです。必ず見つかります。正しく解答できるようにできている問題だからです。
まず「引力としての愛」です。これは五段落前に記述があります。これは、丁寧に読み進めることで必ず見つけ出すことができます。
カントは、こうした意味での愛を「引力」に喩えている。すなわちそれは「私」と他者の間にある隔たりを解消しようとする働きであり、互いに近づき、できることならば一つになろうとすることなのである。
「愛とは他者との間にある隔たりを解消しようとし、互いに近づこうとすることである」と記されていることがわかります。
「斥力としての尊敬」、これはもっと近くの傍線部二つ前の段落で記されています。
~他者には「私」が侵すことのできない自由があるということを、認めることである。それは、ある意味では、他者を「私」から隔たったものとして受け入れることでもあり、「私」と他者の間に距離を維持することを意味する。このような観点から、カントは、尊敬を「斥力」に喩えている。~
「斥力としての尊敬とは、他者には侵すことのできない自由があると認め受けいれることである」と読み解けます。
傍線部の段落に戻れば、この二つ(「引力としての愛」と「斥力としての尊敬」)が「均衡することによって、成立する」とあります。
上記の太線部分三箇所をまとめれば、次のような解答が作れます。
道徳的友情は、相手に近づこうとする愛と、侵すことのできない他者の自由を認める尊敬との均衡によって成立するということ。
なお解答を作るにあたっては、主語・述語の対応を正確にする、接続語を適切に使う、一文を短くするなどの、確かな国語力が必要となります。また、解答のなかで判別できない指示語は使わないなど、基礎的な学びは大切にしてほしいと考えます。
さてこの問題は、「言い換え」を求める問題でした。論説文においては、大切な事項はときに表現を変えつつ何度もくり返して記されます。そのため、入試問題においてもこれについて問う問題は数多く出題されます。これは記述問題に限りません。選択肢問題などでも同様です。大切なキーワードを捉えることが、肝要となるのです。
今回は、論説文の記述問題の例を取りあげました。物語文は、またの機会にいたします。
