●国語が得意でない受験生
今年は、ほんとうに残りわずかになりました。受験生にとっては、今が正念場です。年を明ければ、中学受験では1月入試校が始まるなど、受験が本格的に始動します。当塾には、現在小中学生が在籍していますので、中学受験と高校受験を中心に話を進めていきます。首都圏の中学受験では4教科受験が主流、また、公立校の一般入試は5教科、私立校は英数国の3教科受験が中心となっています。このなかで一番国語が得意、あるいは好きという受験生はあまり多くないようです。「国語が苦手で、他の教科の足を引っ張ってしまっている。」、「他の教科にくらべて、国語の点数が、試験のたびにばらつきがある。いいときはいいけれど、安定していい成績は取れない。」などのお話をよく聞きます。試験のたびにばらつきがあるということは、確実に得点を計算できる得意教科ではないということになります。
国語が苦手、あるいは好きでないという場合だけではなく、多くの受験生には、各教科の受験勉強に、次のような意識があるように思います。
算数や数学は、問題を解くための公式を身につけることで、今までできなかった問題に
答えることができるようになります。また、理科や社会では、今まで知らなかったことを知識として身につけていくことで力がついていきます。これらの教科では、テストの結果に勉強の成果が直結する場合が多いといってよいでしょう。ですので、勉強する際にも明確な目標が立てやすいといっていいと考えます。そして、結果が出ればそれを糧にまた頑張るという、いい流れができていくことになります。
国語にも、語彙や文法などの覚えなければならない知識があります。しかし、入学試験で直接これらの知識を問われる問題は、学校にもよりますが、20%程度の配点です。
多くても40%でしょう。学んだ分は点数には反映しますが、その割合が少ないわけです。
一方、試験の配点の多くを占める読解問題については、国語は日常使っている言葉ですので、誰でも一定の点数は取れます。たとえば選択肢問題で迷い、当て推量で解いた問題でも得点になります。そのために、たまたま点数が良ければ良し、悪ければ今回は運が良くなかったで済ますケースが多いのではないのでしょうか。勉強してもしなくても、点数にそんなに差がつかないという意識があるのだと思います。国語の読解問題に取り組む時間は決して多くないでしょうし、試験の解きなおしをすることもないように思います。
●受験の国語に強くなることの大切さ
これは、とてももったいない話です。ふだんから使っている言葉であるため、ある程度の点数は取れるために、国語の読解問題対策をしっかりと行っている受験生は少ないのが現状でしょう。
しかし国語は、正しく学びさえすれば、必ず確かな得点源になるのです。「点を稼ぐ」という意味では、国語を得意教科にしておくことはとても有利なのです。中学入試では理社にくらべて、国数の配点が高い学校も多くあるのも現実です。
国語の入試問題には、他教科と全く異なる性質があります。他教科では必ず必要となるような知識が必ずしも必要ではありません。たとえば社会なら歴史の問題で、江戸幕府に関する知識がないと解けない問題があるでしょう。しかし、国語は、「問題文や設問にヒントや解答が出ている」のです。ですから、問題文や設問から解答を探し出すことが大切なのです。必要なことは、問題文と設問を正確に読み、その中から正解を見つけ出すことなのです。これができれば必ず国語は得意教科になります。そして、入試における安定した得点源となることでしょう。正しい解法のテクニックを身につけることが大事なのです。これは決して難しいことではありません。実際にどのように問題を解くべきかを、難関校の過去問からいくつか紹介していきます。
●入試問題の解き方
(豊島岡女子学園中学校 2020年度 大問1より)
問五 傍線③「自己内コミュニケーション」とありますが、その説明として当てはまらないものを次のア~オの中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 自己内コミュニケーションは人間関係を良好にしていく社会生活上の知恵である。
イ 自己内コミュニケーションは個人が長年かけて作ってきた思考の習慣である。
ウ 自己内コミュニケーションは相手が初対面の人であっても生じるものである。
エ 自己内コミュニケーションは相手の話を正しく聞くことを困難にしがちなものである。
オ 自己内コミュニケーションは人を観察する際にも話を聞く際にも生じるものである。
解答:ア
本校は、近年とみに進学実績の上がっている難関です。説明的文章の読解、物語文の読解の大問二つの構成です。説明的文章はやや難解なものが例年出題されています。今回は、そのなかから選択肢問題を一題取りあげます。
まず、設問を読みます。「当てはまらないもの」ですから、自己内コミュニケーションの説明になっていないものを見つけることになります。選択肢問題では、傍線の前後をしっかり読むことが大切です。この問題では傍線の直前に、「聞くことの難しさは、相手の言葉を聞く以前に、自分の言葉を聞いてしまっているということにあります。」とあります。「自己内コミュニケーションです。」と続いていますので、この直前の一文が、自己内コミュニケーションを説明していることになります。この一文と選択肢を比較します。
「相手の言葉を相手の言葉を聞く以前に、自分の言葉を聞いてしまっている」とは、相手とのコミュニケーションが良くないこと、すなわち人間関係が良くないことを表しています。選択肢アには、「人間関係を良好にしていく社会生活上の知恵」とあり、これが全く逆の意味を示しています。正解はアです。設問と傍線前後を精読することで確実に正解できる問題の一例です。
ついで、海城中学校の問題を取りあげます。本校は、男子校では御三家に次ぐレベルの難関です。説明的文章の読解と物語文の読解の大問二題であり、文字数は合わせて10,000字近くになる年度もあります。また、選択肢問題は、一つ一つの文が長いことに特徴があります。ただし全体としては、確かな読解力があれば十分に解答できる問題が大半です。
(海城中学校 2020年度 大問2より)
問6 傍線部5「スラム住民にもそういう気持ちを与えてしまう可能性がある」とあるが、それはどういうことか。次の中から適当なものを一つ選び、記号で答えなさい。
ア 自分たちの生活を興味本位だけで見学にきて、あからさまにあわれみの目を向ける観光客の横暴さが、スラム住民ににくしみの気持ちを抱かせるおそれがあるということ。
イ 自分たちの生活を見せたところで、観光客は同情するだけでスラムの文化を学んでくれるわけではないことが、スラム住民にむなしさを感じさせるおそれがあるということ。
ウ 自分たちの生活を観光客からものめずらしそうに見られたり、あわれみの言葉をかけられたりすることが、スラム住民にみじめな気持ちを抱かせるおそれがあるということ。
エ 自分たちの生活に同情して、現地でお金を使ってくれる観光客のおかげで何とか生計を立てていることが、スラム住民に後ろめたさを感じさせるおそれがあるということ。
解答:ウ
「それはどういうことか。」とありますので、これは傍線部の説明が求められています。傍線部を説明している選択肢が正解です。まず傍線部中に手がかりを探します。「そういう気持ち」というありますので、これが何かを明らかにします。傍線部を含む一文は、下記です。
みなさんも、「うわー、これが日本の高校生の生活か!こんなしょぼい教室で勉強してるんだ。かわいそう」と言われたらショックでしょうから、スラム住民にもそういう気持ちを与えてしまう可能性があるということですね。
一文の一部に傍線が引かれている場合、その一文には必ずヒントが隠されています。傍線部の直前に「そういう気持ち」が記されています。「かわいそう」と見下され、ショックを受けた気持ちです。選択肢ウには、同様の意味である「あわれみの言葉」、「みじめな気持ち」がありますので、正解はウとなります。なお、アにも「あわれみの目」という言葉がありますが、「観光客の横暴」、「にくしみの気持ち」を文中から見つけることはできませんので、これは不正解です。
難関の選択肢問題も、解法をしっかり身につけ、正しく読解すれば確実に正解にたどり着くことができるのです。合格するために必要な力を蓄えるために、国語の読解問題を得意分野にしておくことは、とても大切なことであると私は考えています。
当塾では、生徒一人ひとりが国語の入試問題に対応できる力をつけることができるように、指導を重ねています。なお、国語では、一人ひとりが間違う場所が異なります。模擬試験などで、どうして間違えたのかを明らかにして、正解に導く解き直しには、特に力を入れています。こうした授業がを可能なのは、一対一個別指導だからです。
当塾の生徒さんは、全員が体験授業を経て入塾されています。体験授業へのお申込みをお待ちいたしております。体験授業は無料です。関心を持たれた方は、このホームページのお問い合わせフォームにご連絡ください。
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本年はまことにお世話になりました。ありがとうございます。
良いお年をお迎えください。