●今までの努力を思い出す

首都圏の中学入試では、一月受験校の試験が始まりました。すべての試験が終わる直前まで、勉強を続けていくことが肝要です。

受験生の皆さんは、今まで勉強を続けてきました。それは紛れもない事実です。受験勉強が苦しく投げ出しそうになったこともあるでしょう。また、部活などとの両立に苦しんだことがあるかもしれません。それでも学びを続けた、努力してきたわけです。努力したことにより、実力は着実についているのです。

●自信を持つ

自分は合格するという自信、合格できる力があると信じることが大切です。たしかに模試の合格可能性が低かった、自分の学校や塾からは志望校への進学実績が少ないなどのデータから、どうせダメだろうと思いがちかもしれません。ところがそのような状況からでも、合格している受験生はいるのです。自分で勝手にあきらめる必要はありません。

自信を持つときに、客観的データは不要です。根拠などなくとも、自信を持って受験に臨むことです。少なくとも自分の力に疑心暗鬼のまま試験を受けるよりも、集中してリラックスしてテストを受けられるはずです。

自信は自分の気持ちの持ち方です。他人が決めるものではありません。偏差値が決めるものでもありません。自信を持って当日の試験に臨むことで、過度に緊張することなく実力を発揮できるはずです。試験会場では隣の受験生がやけに優秀に見えるかもしれません。しかし、他の受験生も不安を抱えて会場に来ている人が多いはずです。周囲の人は気にせずに自信を持って臨むこと、それによって自分の力を十二分に発揮できることでしょう。

●最善の努力を貫く

試験までの残り時間はあとわずかです。もうこれ以上伸びないと考えて学びに力が入らないとしたら、とてももったいないことです。直前まで学力は伸びます。やればやるだけ得点力が上がります。

そして大事なことは、試験当日には最後の一分、一秒までベストを尽くすことです。途中であきらめてしまうひと、出来が良かったからと安心し最後の見直しをしないひとたちと比べ、あきらめずに時間を使い切る受験生のほうが高得点を獲得できます。これは教科を問わず、やり切るべきことだと思います。何かしらのケアレスミスに気づいたり、考え抜いたことによって正しい答えが導き出されたりする、そういうことがあります。

また、どの問題も白紙で提出することは止めましょう。白紙ならば零点です。何かしら記されていることで、得点の可能性はあります。間違いを記して減点されることはないのですから、解答用紙は埋める努力をしましょう。

試験時間は、誰にも平等に与えられるものです。今までの学びの成果を存分に発揮するには、最後の最後まで粘ることです。与えられたチャンスを使い切る人にこそ、幸運はやってくるのです。そう信じています。

●問題に取り組むことを楽しむ

受験生は志望校に合格する目的で、受験勉強をしています。この勉強は、無味乾燥の目的のための手段に過ぎないわけではありません。受験のための勉強であっても、様々な得るものがあります。受験直前の時期だからこそ、問題を解くこと自体を楽しむ気持ちも必要だと考えます。

算数や数学の問題で、とびきりむずかしい問題を解けたときの達成感は、多くの受験生が感じたことがあるのではないでしょうか。この喜びは、国語の問題でも感じることができると思います。一生懸命に考え、自信を持って選んだ選択肢が正解だったり、記すべき要素を吟味し満足のいく記述の解答が書けたりということは、学びを積み重ねてきたからこそ体験できることだと思うのです。

これからの受験勉強は、嫌々学ぶのではなく、問題を解くことを楽しむくらいで臨んでみてはいかがでしょうか。そのことにより、効率の良い学びとなることでしょう。むずかしい問題が解けたときは、自分自身を褒めてください。一年前にはできなかったことができたという達成感を味わうことです。これが自信につながっていきます。

●入試直前までに続けておきたいこと

国語の受験勉強で特にこれはしておいてほしいと思うことを、二つあげておきます。

まず一つ目です。受験する学校については、併願校も含む全受験校の問題を一度は解いておくことが大事です。まだ一度も解いていない学校があれば、今からでも遅くありません。必ず取り組んでください。

一回分を解いて満足いく点数だった場合、すなわち合格者平均点を超えた場合などは、学校によってはそれだけでも構いません。併願校で優先順位が低い場合などです。ただしふだんの出来と比較して満足いく点数が取れなかった場合は、満足いくまで、他の年度のものも解いてみることをおすすめします。学校によって出題傾向(問題の配列なども含む)が異なります。これに慣れないまま本番に向かうのは避けてほしいのです。

何度か解いていくと、多くの場合得点が上がります。これはその学校の問題に慣れた証拠です。本番で必ずこの経験は生きてきます。実力がありながらも点が取れないという状況にならないように、この過去問演習はやり切ってほしいと考えます。実際には合格しても進学する予定のない学校においても同様です。こういう学校での合格が、自信に変わっていきます。

二つ目は、漢字の問題です(熟語も含みます)。漢字の配点は高いということを、改めて認識しておきましょう。

当塾で学ぶ受験直前のお子様を見ていますと、漢字がよくできるお子様とそうでないお子様に二分されます。よくできる子は地道に学びを積み上げてきたわけです。例えば漢字の配点が20点だとして満点を取れる子と10点しか取れない子では、ここだけでも大きな差になるのです。

今まであまり真剣に取り組んでいなかったからといって、このまま手つかずでいいとは思いません。たしかに今から覚えた漢字が出るとは限りません。しかし少しでも点数を上げるための努力をすることは、(気持ちの安定も含めて)重要なことだと考えます。

具体的には次のことをしてみてください。これからおこなう過去問とこれから受ける入試にて出来なかった漢字問題は解き直す、そしてそれは確実に身につけるようにするということです。これらで出題される漢字は、これから受ける学校で出題される可能性は高いと考えます。ぜひともこれだけは実行してください。少なくとも自信につながることは確かです。

これら全部はやりきれないと思う受験生もいらっしゃるかもしれません。だからといって何もしないのは、愚かなことです。まず始めることです。目の前にあるテキストに取り組むことです。

●春はもうすぐそこまで

大学に入学する前の一年間、私は浪人生活を送りました。その時に初めて恩師と呼べる先生方に出会いました。そのなかのおひとりに古文を担当された先生がいらっしゃいます。正直、その先生のおかげで古文が読めるようになりました。この先生が、受験間近の時期に、
「やれるところまでやればいいんです。」と授業でおっしゃった言葉が強く印象に残っています。

そのときの 「やれるところまでやればいいんです。」との言葉には救われた気がします。もちろんその先生にしろ、学ぶべきことを疎かにしていいとは思っていなかったでしょう。
むしろ、学びに対しては他のどの先生よりも厳しい方でした。先生は、私たちの状況を察し、こういう時期こそ地道に学びを続けなさいと教えてくださったのだと思っています。

今、季節は冬です。私は冬の木が好きです。すっかり葉を落として、元気がないように見えるかもしれません。しかしそうではありません。冬の木は、春の芽吹きに向けて豊かな力を蓄えているのです。しっかりと生きているのです。立春は二月四日です。春はもうすぐそこまで来ています。合格をお祈りいたします。