●大切な「語彙力」

当塾は、国語の指導を中心とした個別指導塾です。当塾を始めた理由は、国語力を高めることが、中学受験や高校受験の役に立つからだけではありません。私は、生徒の皆さんに大学生や社会人になってからも役立つ力を身に着けてほしいと願っているからです。この力は、国語を学ぶことで定着していきます。この力は、物事を正しく理解する力と、自分の考えを正しく伝えられる力です。この力は、「論理的思考力」と言ってよいでしょう。論理的思考力を養うための学習を重視し、当塾では「筆者の言いたいこと」をつかんだり、自分の考えを表現したりする練習を大切にしています。

さて、この「論理的思考力」は、言葉を使って考える力である訳ですが、そもそも言葉を知らなければ、この力を養うことはできません。国語は、現在私たちが使っている日本語を学ぶのですから、正しい読み方をすれば、文章の多くの部分は理解することができることでしょう。ただし、もしわからない言葉が出てきたら、わからない漢字が出てきたら、前後の文脈から推測するしか方策がありません。もし、その言葉に筆者の思いが含まれているとしたら、肝心の筆者の「言いたいこと」が理解できないこともあり得るのです。言葉はより多く、より正確に知っていたほうがいいのです。

さて、中学受験生はとても良く勉強していますが、語彙の力がやや不足気味の生徒が多いと感じています。よく授業で「これ、どういう意味の言葉ですか。」と聞かれることも多いのですが、わからない言葉を調べる習慣のない生徒も多いようです。今日は、国語力を高めるのに必須である「語彙力」の育て方について記していきます。

●国語辞典を選ぶ

語彙力をつけるには、国語辞典が必修の教材です。これから国語辞典を選ぶなら、小学生用の国語辞典で十分です。ぜひとも、親子で書店に足を運び、それぞれの辞書を見比べて、お子さんに最適の一冊を選んでほしいと考えます。お子さん本人が気に入ったものが一番です。

ポイントは、「わかりやすさ」と「見やすさ」です。言葉を一つ選んで、説明文が子供にわかりやすく書かれているかを注目してみましょう。これは子供に感想を言ってもらえばいいでしょう。続いて、用例が豊富に紹介されているかを確認しましょう。用例を読むことによって、その言葉がどのように使われるものかを知ることができます。後は、
色使いやイラストなどが、お子さんの興味にあっているかどうかです。

いずれにしても、親が与えるのではなく、お子さんが納得して自分で選ぶことが大切です。愛着も湧いてくることでしょう。市販されている小学生向けの国語辞典ならどれを選んでも間違いはありません。お子さんにぴったりのものを見つけることが大切です。

家に辞典がやってきました。これからは、お子さんが十分に活用すれはいいのです。使えば使うほどに力がついていきます。活用にあたって、まず次のことに気を付けておくと良いでしょう。辞典にはだいたいケースがついていますが、これは取っておきましょう。すぐに調べられるようにおくことが大切です。また、国語の勉強の時だけでなく、理科や社会科、算数の問題でわからない言葉が出て来た時も、いつでも調べられるように、手に取りやすい場所に置いておくようにしましょう。

●国語辞典を使いこなす

学校の教科書、塾の教材ともに、わからない言葉が出てきたら必ず辞典で調べること、これを習慣にしましょう。これだけで、語彙力は必ずついていきます。一度調べた言葉にはマーカーをしたり、付箋をつけたりすることに決めておくといいと思います。「自分は、一年間でこれだけ辞典を調べたんだ。」という達成感を持つことができることでしょう。次の目標も立てやすくなることでしょう。なお、辞典で意味を調べる前に、「この言葉はこんな意味かな?」と予想するのもいい勉強になります。実際、中学入試などの入学試験でわからない言葉が出来てきたら、前後の文脈などから判断していくことが求められます。

続いて、作文など、文章を書く時も使ってみましょう。漢字や仮名づかい、送り仮名などがうろ覚えのとき、自信がないときに確認のために使うことができます。正しい書き方を確認できます。また、辞典を引いているうちに、同じものを別の言い回しにするヒントも得られるかもしれません。自分で書く文章の幅が広がるはずです。

辞典を使ったクイズもいろいろできそうです。ここでは、「逆引きクイズ」をご紹介します。これは、辞典の説明部分を読んで、それがどの言葉かを当てるものです。例えば、今手元にある「例解学習 国語辞典」(小学館)では、ある言葉が次のように説明されています。

①食べたり話をしたりするところ。例:ガムを〇に入れる。
②ことば。例:〇がうまい。
③うわさ。例:人の〇がうるさい。
④よび出し、さそい。例:野球部から〇がかかる。
⑤味覚。例:〇がこえている。
⑥人や物が出入りする場所。例:〇が広いびん。
⑦物ごとのはじめ。例:話の〇を切る。
⑧はたらく所。例:いい〇が見つかる。
⑨人の数。例:〇が多いので生活費がかさむ。
⑩寄付などの単位。例:一〇千円。

この言葉は、「口」です。実際のクイズでは、後のほうの意味から先に読んでいくなどの工夫をすると、より楽しいものになります。このクイズをすることで語彙が広がったり、辞典を早く引けるようになったりと、多くの学びがあることでしょう。なお、用例まで問題に含めると、言葉の使われ方がよりよくわかることになり、語彙力が高まります。その他、熟語や成句をヒントにしてもいいでしょう(口あたり、口がうまいなど)。保護者が問題を出して、お子さんが答える、子どもどうしでやってみるなどを試してみましょう。

今日は、国語辞典についてお話をしました。国語辞典は、学習には必修の教材です。縦横無尽に活用され、語彙力が高まることを願います。語彙力がつけば、国語の力はいっそう高まります。次回も続いて語彙力を高める方法について記していこうと思います。