●入試の記述問題を見る
国語学習における「要約」の重要性については、多くの方々が様々な場面で語っています。そのためなぜ要約が重要かはここでは触れずに、要約ができれば問題が解けるということに焦点を当てていくことにします。実際の中学入試問題を見てみましょう。今回取りあげる問題は、2025年度早稲田中学校(第一回)の大問二です。
今回取り上げる設問は、問5です。
傍線部4 「友情」を通して、どのような思考が可能になりますか。その思考に至る過程を踏まえて、次の文に合うように四十五字以上五十字以内で説明しなさい。
( )ことができるようになる。
※上記の( )に入る内容を四十五字以上五十字以内で記すことが求められています。傍線部4を含む段落を、下記に引用します。
平たく言えば、それは自問自答の営みに他ならない。もっとも、思考を自己との対話として捉える発想自体は、必ずしもアーレントの独創ではない。少なくとも同様の考え方の起源は、古代ギリシャにまで遡ることができる。自己と対話する、ということは、「私」が自分自身と何らかの形で関係する、ということを意味する。ではその「関係」は一体何だろうか。興味深いことに、古代ギリシャにおいて、それは友情(傍線部4)として説明されていた。つまり、物事を多様な角度から吟味する思考は、友達と対話するときのように、「私」が自分自身と対話することで成し遂げられるのである。アーレントもまた、そうした発想を継承している。
この段落で筆者のいいたいことは何でしょうか。論説文で筆者のいいたいことをつかむこととは、書き手の配置した文章構造を読み解くこと(読解すること)であり、要約することであると言えます。
文章構造によって要約に必要な技能は異なりますが、この段落では、①何度もくり返される語句(似たものもふくむ)はいいたいことであることの可能性が高いということと、②「つまり」の後は大切ということに留意して読んでいくとよいでしょう。実際に読んでいきます。
冒頭の一文の「自問自答の営み」が、第二文では「自己との対話」、第三文では「『私』が自分自身と何らかの形で関係する」と言いかえられています。また、第四文では、この関係が古代ギリシャでは「友情」として説明されていたと記されています。これらは、重要語句としておさえておくべきと考えられます。
また、次の一文は、「つまり」から始まっています。今までの文章を、一般化して言いかえているわけです。この一文を整理すると、「物事を多様な角度から吟味する思考は、友達と対話するように私が自分と対話することで成し遂げられる。」となります。これで要約ができたことになります。
このように読解していくことが、試験のための国語の読み方の基本です。
●実際に解いてみる
要約を初読の段階でしっかりとおこなうことができれば、たとえ難関校の読解問題といえども短時間で解答することが可能です。問題を改めて確認します。「友情」を通して、どのような思考が可能になるかを、その思考に至る過程を踏まえて記すというものです。
設問にある「友情」と「思考」は、すでにこの段落の読解=要約を通して、理解されています。「その思考に至る過程を踏まえて」という設問における注文に対応する内容は、「友達と対話するときのように」と考えられます。
以上を踏まえれば、例えば「友情で結ばれた友達と対話する経験によって、物事を多様な角度から吟味するための自己との対話を行う」といった解答を導くことができるでしょう。
この問題は、この段落の要旨を問う問題とほとんど変わらないというわけです。
記述問題に取り組む際、模範解答例を書こうと四苦八苦するよりも、まずは部分点を確実に取りたいものです。部分点を取る上でまず大切なことは、本文から素早く正確に、「答えるべき内容」を見つけてくる作業です。そのためには、文章構造を理解した正しい内容の要約ができることが必要となってきます。

●読解力=要約力をつける学びが大切
今回取りあげた記述問題からわかるように国語の問題を解くために、専門的な教養やセンスは必要ありません。「国語の成績がなかなか伸びない」とお悩みの方は要約力を磨くことにより、国語を攻略することができるでしょう。
要約する力の重要性を、当塾では強く感じております。これは受験勉強だけではありません。私は長い会社勤めを通じて、相手が何を言いたいのかをつかむことや、幹となる部分と枝葉を見分けることの重要さを実感してきました。これができる人とできない人がいます。必ずしもどの大学の出身かとは関係なかったと記憶しています。
当塾ではふだんの授業から要約を大切にしており、折々で要約演習をおこなっております。加えて短期講習においては、要約に特化した授業の受講もできます。関心を持たれた方は、下記よりお問い合わせください。