●勉強してきたという努力を思い出す

今春の受験生は、まもなく本番の入学試験を迎えます。残されている時間は少なくなってきましたが、できることはまだあります。私なりにこれからをどのように過ごすべきを、考えてみました。

受験が間近になるにつれて、できていることではなく、できていないことが気になりがちです。気持ちばかり焦っても仕方ありませんが、本当に今の実力で合格できるのであろうかと不安がよぎります。受験生の多くは、このような状態になることがあるのではないでしょうか。

しかし、皆さんは今まで勉強を続けてきました。それは紛れもない事実です。受験勉強が苦しく投げ出しそうになったこともあるでしょう。また、部活などとの両立に苦しんだことがあるかもしれません。それでも学びを続けてきた、努力してきたわけです。努力したことにより、実力は着実についているのです。ネガティブではなく、ポジティブに捉えるのが肝要に思います。

●自信を持って試験に臨む

自分は合格するという自信、合格できる力があると信じることが大切です。たしかに模試の合格可能性が低かった、自分の学校や塾からは志望校への進学実績が少ないなどのデータから、どうせダメだろうと思いがちかもしれません。ところがそのような状況からでも、合格している受験生はいるのです。自分で勝手にあきらめる必要はありません。

自信を持つときに、客観的データは不要です。根拠などなくとも、自信を持って受験に臨むことです。少なくとも自分の力に疑心暗鬼のまま試験を受けるよりも、集中していい意味でリラックスしてテストを受けられるはずです。

自信は自分の気持ちの持ち方ひとつです。他人が決めるものではありません。偏差値が決めるものでもありません。自信を持って当日の試験に臨むことで、過度に緊張することなく実力を発揮できるはずです。試験会場では隣の受験生がやけに優秀に見えるかもしれません。しかし、他の受験生も不安を抱えて会場に来ている人が多いはずです。周囲の人は気にせずに自信を持って臨むこと、それによって自分の力を十二分に発揮できることでしょう。

●最後までベストエフォートを貫く

試験までの残り時間はあとわずかです。もうこれ以上伸びないと考えて、学びに力が入らないとしたらとてももったいないことです。直前まで学力は伸びます。やればやるだけ得点力が上がります。

例えば、漢字の問題です。多くの学校で出題されます。仮に100点満点で10点の配点があるとします。10点を取れるのと5点しか取れないのでは大きな違いです。試験の合否は1点を争うのですから疎かにできません。漢字が苦手な受験生だとします。これから学んでもその漢字が出題されるかどうかわからないからもう学習は止めようという人と、出る可能性はあるのだから学びを続けようという人では、差がつくと考えます。前日に暗記したことが偶々出題されるということは、現実としてあります。頑張った人は必ず報われる、その気持ちで取り組みましょう。

もう一つ大事なことは、試験当日には最後の一分、一秒までベストを尽くすことです。途中であきらめてしまうひと、出来が良かったからと安心し最後の見直しをしないひとたちと比べ、あきらめずに時間を使い切る受験生のほうが高得点を獲得できます。これは教科を問わず、やり切るべきことだと思います。何かしらのケアレスミスに気づいたり、考え抜いたことによって正しい答えが導き出されたりする、そういうことがあります。

試験時間は、誰にも平等に与えられるものです。今までの学びの成果を存分に発揮するには、最後の最後まで粘ることです。与えられたチャンスを使い切る人にこそ、幸運はやってくると信じています。

●問題に取り組むこと自体を楽しむ

受験生は志望校に合格する目的で、受験勉強をしています。この勉強は、無味乾燥の目的のための手段に過ぎないわけではありません。受験のための勉強であっても、様々な得るものがあります。受験直前の時期だからこそ、問題を解くこと自体を楽しむ気持ちも必要なのではないでしょうか。

算数や数学の問題で、とびきりむずかしい問題を解けたときの達成感は、多くの受験生が感じたことがあるのではないでしょうか。この喜びは、国語の問題でも感じることができると思います。一生懸命に考え、自信を持って選んだ選択肢が正解だったり、記すべき要素を吟味し満足のいく記述の解答が書けたりということは、学びを積み重ねてきたからこそ体験できることだと思うのです。

これからの受験勉強は、嫌々学ぶのではなく、問題を解くことを楽しむくらいで臨んでみてはいかがでしょうか。そのことにより、効率の良い学びとなることでしょう。むずかしい問題が解けたときは、自分自身を褒めてください。1年前にはできなかったことができたという達成感を味わうことです。これが自信につながっていきます。

●「やれるところまでやればいいんです。」

大学に入学する前の一年間、私は浪人生活を送りました。その時に初めて恩師と呼べる先生方に出会いました。そのなかのおひとりに古文を担当された先生がいらっしゃいます。正直、その先生のおかげで古文が読めるようになりました。この先生が受験間近の時期に、「やれるところまでやればいいんです。」と授業でおっしゃった言葉が強く印象に残っています。

受験生には必須の学習項目があり、受験が近づくのそれがマスターできていないとなると不安がひろがります。そして気ばかりが焦って学びに身が入らなくなることもありがちです。受験直前の私は、そのような状態でした。

そのときの 「やれるところまでやればいいんです。」との言葉には救われた気がします。もちろんその先生にしろ、学ぶべきことを疎かにしていいとは思っていなかったでしょう。むしろ、学びに対しては他のどの先生よりも厳しい方でした。先生は、私たちの状況を察し、こういう時期こそ地道に学びを続けなさいと教えてくださったのだと思っています。

今よりも大学を目指して浪人する生徒の多い時代でした。そして私の通っていた予備学校は、東京大学に入学する生徒が多いことで知られていました。ある年の東大新入生におこなった尊敬する人物のアンケートで、著名な学者でも歴史上の人物でもないその先生が一位になったことがありました。それだけ影響力のあった方でした。神々しい雰囲気を持った先生でした。私は東大には入れませんでしたが、大学では教育学を学び30年余り一般企業に勤めた後、国語塾を営んでいます。時々その先生のことを思い出します。

来春の受験生に残された時間はあとわずかです。その時間を有意義に活用し、志望校に合格されることをお祈りいたしております。

写真は、当塾すぐ近くの駒沢オリンピック公園(令和6年1月1日撮影)です。

本年も、多くの塾生の皆様とともに新年を迎えました。授業は、今日から開始いたしました。冬期講習を経て、三学期の授業へと進みます。これからも有意義な学びを追究いたします。変わらぬご高配のほど、お願い申しあげます。