●入試が始まりました

本格的な受験シーズンになりました。大学入学共通テストは15日、16日に行われます。また、首都圏の中学受験は、埼玉県内の私立中学校で10日に入学試験が始まるなど、本格的に始動しました。当塾は、東京都内在住の受験生が中心であることもあり、1月中の試験はいわゆるお試し受験の塾生が大半ですが、すでにいくつか合格の報せをいただいております。おめでとうございます。

その学校に行くか行かないかは別にしても、合格通知をもらうということは大きな喜びです。今まで積み重ねてきた学びが認められたわけです。次なるステップに向けての前進であり、自信につながることは言うまでもありません。ただし、これからのもうひと頑張りが、結果を大きく左右する、そのつもりで今後の試験に臨んでほしいと願います。

当塾は、完全一対一の個別指導で講師は私一人ですので、多くのお子さんを見ることはできません。それゆえに一人ひとりのお子さんの成長を間近に感じてきました。国語の読解問題が苦手だったお子さんも、知らないうちに解法を習得して一定の点数をとれるようになってきました。これからは、確実に合格するために上乗せが必要です。これから受験までにできることに何があるかについて、記していきます。

●過去問で自信をつける

この時期は、今まで学んできたことに対する自信を保ちながら、いっそう得点力を向上させることが肝要に思います。受験生は、おおよそ夏休み明け頃から志望校の過去問を解いてきたのではないかと思います。直前に本命校の過去問を新たに解いたとき、期待通りの点数が仮に取れなかった場合、繊細なお子さんの場合、自信を失うことになりかねません

もし志望校の過去問演習をするのならば、これまでに解いたものをもう一度解いてみることをおすすめします。解法を確認することを通して、振り返りを行ってみましょう。もし手元に以前解いた解答用紙があれば、見返してみてください。以前はできなかった問題ができるようになっていることに気づくはずです。この作業を行うことで、本番では落ちついて実力を発揮できるはずです。

上記の作業は解法の確認が中心ですので、一定程度の時間を費やして行うことになります。一方、受験には制限時間がありますので、このなかで集中して問題を解く練習は続けておき、勘を鈍らさせないことも大切です。この練習にあたっては、志望校でも併願校でもない学校の過去問や塾の教材を用いるのがいいでしょう。男子校志望ならば女子校の問題を解くなどでも構いません。仮に点数が良くなくとも落ち込む必要はありません。この学校のための学びはしてきていないのだから、出来なくて当然だと思うくらいでいいでしょう。

この練習を行うときは、できるだけ新しい年度のものを選ぶのをおすすめします。たとえば昨年の入試で注目され、入試に出題された作品は、その後数年は他校でも出題される可能性が高いからです。もし本番で同じ作品が出題されれば運がいいと思えばいいでしょう。出来なくて当然と先に記しましたが、もちろんよくできていたら、大いに喜び自信にすることです。この時期、明るい気持ちが大切です。

●知識を増やし続ける

続いて、漢字やことわざなどの知識が問われるものについて、記しておきます。当塾生もそうなのですが、語彙の過去問演習や漢字テストなどをこの時期に行うと、必ずしも全問正解でない場合がよくあります。この時、これもできていない、あれもできていないと焦るのでなく、「よかった、知らなかった漢字が見つけられた。」くらいの気持ちでいるのがいいでしょう。そして、これをチャンスとして、ここで習得すればいいのです。語彙力などは試験直前まで上がります。直前まで分からない問題が出てきていいのです。できなかった問題は目立つものですが、せいぜい一から二題ではないでしょうか。これから十分に身につけられます。

当塾では、国語の他、社会も過去問演習などを行っています。重要語句チェックなどをすると、どの生徒さんも間違えることがあります。間違って覚えていた、そもそも知らなかったなど様々ですが、このときは満点でなくてよかったと思うとよいでしょう。満点ならば自分の不足している部分を知らないままに、先に進むことになるからです。当然のことながら、漢字などと同様、ここはガマンしてしっかりと頭に入れることです。

直前のこうした知識確認を行うと、自分の苦手分野が見えてくるはずです。社会は地理、歴史、そして政治・経済に分かれます。足りない分野を集中して学ぶことが大切です。あとは時事問題対策です。塾ではおそらく時事問題のテキストが配布されていることでしょう。これをしっかりと学ぶことです。社会は直前まで伸びます。あきらめる必要はありません。

●不用意な失点を避ける

塾で行われているテスト、返却された答案用紙を見ていると気づくことがあります。、このお子さんは、あと10点はすぐに点数がアップできるのにと思うことが多々あるのです。それは設問をしっかりと読んでいない、理解していないということです。せっかく本分を理解していても設問に答えられないとしたら、ほんとうにもったいないことです。

「なぜでしょうか」「理由を答えなさい」→「~から。」
「どういうことですか」→「~ということ。」
「筆者の考えを書きなさい」→「~と考えている.。」

など、問われた形に合わせて答えれば問題ありません。なお理由を答える問題のとき、「 ~から。」と答えるべきことを良く教えられるせいか、どの問題にも「 ~から。」と答えてしまうお子さんがいらっしゃいます。これはしっかりとチェックしておきたいところです。文末表現で減点されることもあります。

「正しくないものを選びなさい」という設問で、正しいものを一つ見つけ、すぐに〇をつけてしまっているような答案、これもよく目にします。抜き出し問題で、20字ちょうどと記してあるのにそれを見落としている例などもあります。

こういうお子さんには、設問を落ち着いて正確に読むということを、今一度徹底してほしいと思います。大げさではなく、10点は確実に上がります。どの教科でもその傾向があるなら、相当合計点が上乗せされるはずです。

●傍線部をしっかりと読む

国語の読解問題では、傍線部や傍線部を含む一文に解答のヒントがある場合がとても多いのです。読解の苦手はお子さんは、傍線部からはるか離れた箇所ばかりに目を向け、近くを見ていない傾向があります。傍線部をしっかりと読むことの大切さについて、一つの例をご紹介します。

~2020年度 女子学院中学校 大問二 問十二~
傍線⑩「おんぶしてもらったり、もたれさせてもらったりもする」とありますが、他の人に対してどのような関係であると考えられますか。最も適切なものを次から選びなさい。
ア どんな時も相手に甘えてしまう関係
イ 強いものが弱いものを助ける関係
ウ 何かを与える代わりに何かをもらう関係
エ 安心して相手を頼っている関係

この問題は、設問と選択肢を正確に読むことで解答が導き出せます。他人に「おんぶしてもらったり、もたれさせてもらったりもする」関係とは何かを選ぶ問題です。傍線部の末尾「~もする」に注目します。これは、「~ときもある」という意味ですので、「どんな時も~」とあるアは、誤りです。傍線部の内容は、他人に頼っている様子ですので、残りの選択肢のなかからエが選べるわけです。

難関校の問題も、地に足をつけてしっかりと読むことで正解できました。正しい解き方を身につけておけば問題ありません。

傍線部のキーワードに着目したり、指示語があればその内容を明らかにしたりすることを大切にするだけで、正解に近づくということを頭に入れておきましょう。

●やれるところまで・・・。

この時期になると、自分自身の受験経験ではなく、長男の中学受験、大学受験を思い出します。当時は親として接したわけですが、現在は塾講師という立場で受験生とふれあっています。それでも親の子供への愛情や期待は十分に理解しているつもりです。立ち位置の変わった現在、親御さんには心から頭が下がる思いですし、共感しています。この一年間、親の子への強い愛情を感じたことが何度もありました。

ただ、意外に子供たちは親の知らないところでずいぶんと成長しているような気がしています。信頼することも大切なように思います。お子さんが自信を持って受験に迎えられることをお祈りしています。

大学受験生の頃、尊敬していた予備校の先生に言われた言葉があります。「やれるところまでやればいいんです。」勇気づけられ、不安が少なくなりました。足りていないところ、不安なところは目につきがちです。けれども確実に力はついてきているのです。残りの時間、後悔も不安もなく、目のまえにある学びを続けていくことが、勝利への近道となることでしょう。