●入試問題の中心のひとつである物語文の読解
国語の入試には必ず読解問題が出題されます。大きく分けると、論説文・説明文と、物語文になります。論説文・説明文と物語文、どちらが得意かと質問された場合、どのように答えるでしょうか。たしかに難しい言葉が多く、ときになじみにくい題材が出題される論説文よりも、比較的読みやすい物語文が好きだと答える生徒さんは多くいます。しかし、そういう生徒さんでも、物語文は登場人物の気持ちを答える必要があるため、あまり得意でないという場合が多いようです。また、物語文が得意、あるいは好きという生徒さんでも、必ずしも常に試験で高得点を得ているわけではないケースが多いのが現状です。物語自体は楽しく読めたのに、点数は思ったほど良くなかったというはなしをよく聞くのです。今回は、入試で実際に出題された問題も例にあげつつ、物語文の解き方について記していこうと思います。
物語文の設問の多くは、心情を問うものです。そのため、登場人物の気持ちを読む感受性が必要と思われる方もいらっしゃるかもしれません。また、人の気持ちがわからないから物語文を解くのが苦手だ、という生徒さんもよく見かけます。どちらかというと男の子に多いようです。ですが、物語文を解くのに必要なのは、特別の感性ではありません。むしろ、感性や想像力ではなく、論説文を解くのと同じように、論理的に読み解いていくことが大事なのです。具体的に何に留意して読んでいくべきか、みていくことにしましょう。
大きくは、次の二つに気をつけて読んでいくことになります。それは、場面をとらえることと、心情をとらえることです。まずは、場面をとらえることが大切です。特別むずかしいことをが必要なわけではありません。「だれが」「いつ」「どこで」「どうした」を正確におさえておくということです。物語を読み進めていくうえでは、誰が中心人物なのかを明らかにして、周囲にどんな人がいるのか、どのようなできごとが起きたのか、それによって、登場人物の人間関係はどう変わったのかを把握しておきましょう。物語が、「いま、どの場面か?」を正確に押えることが大事です。心情把握の問題に対応するために、これは、とても大切なことです。登場人物の性格が急に変わることはめったにありませんが、心情はできごとに応じて変化します。どの場面の心情かが大事なのです。
国語の入試には必ず読解問題が出題されます。大きく分けると、論説文・説明文と、物語文になります。論説文・説明文と物語文、どちらが得意かと質問された場合、どのように答えるでしょうか。たしかに難しい言葉が多く、ときになじみにくい題材が出題される論説文よりも、比較的読みやすい物語文が好きだと答える生徒さんは多くいます。しかし、そういう生徒さんでも、物語文は登場人物の気持ちを答える必要があるため、あまり得意でないという場合が多いようです。また、物語文が得意、あるいは好きという生徒さんでも、必ずしも常に試験で高得点を得ているわけではないケースが多いのが現状です。物語自体は楽しく読めたのに、点数は思ったほど良くなかったというはなしをよく聞くのです。今回は、中学入試で実際に出題された問題も例にあげつつ、物語文の解き方について記していこうと思います。
物語文の設問の多くは、心情を問うものです。そのため、登場人物の気持ちを読む感受性が必要と思われる方もいらっしゃるかもしれません。また、人の気持ちがわからないから物語文を解くのが苦手だ、という生徒さんもよく見かけます。どちらかというと男の子に多いようです。ですが、物語文を解くのに必要なのは、特別の感性ではありません。むしろ、感性や想像力ではなく、論説文を解くのと同じように、論理的に読み解いていくことが大事なのです。具体的に何に留意して読んでいくべきか、みていくことにしましょう。
大きくは、次の二つに気をつけて読んでいくことになります。それは、場面をとらえることと、心情をとらえることです。まずは、場面をとらえることが大切です。特別むずかしいことが必要なわけではありません。「だれが」「いつ」「どこで」「どうした」を正確におさえておくということです。物語を読み進めていくうえでは、誰が中心人物なのかを明らかにして、周囲にどんな人がいるのか、どのようなできごとが起きたのか、それによって、登場人物の人間関係はどう変わったのかを把握しておきましょう。物語が、「いま、どの場面か?」を正確に押えることが大事です。心情把握の問題に対応するために、これは、とても大切なことです。登場人物の性格が急に変わることはめったにありませんが、心情はできごとに応じて変化します。どの場面の心情かが大事なのです。
●心情を把握する
さて、一番大切な心情のとらえ方について、整理しておきましょう。感受性や想像力を発揮して心情をとらえるのではなく、気持ちを論理的に、客観的に読み取っていくのです。答えやヒントはすべて、文章中に書かれています。気持ちは、できごとがあると動き、その気持ちはかたち(セリフや行動)になって現れます。この現れたものを文中から探すのです。
はじめに、心情語(登場人物の気持ちを直接表している言葉)を見つけることが大事です。これは、直接気持ちが書かれていますから、見つけるのは容易です。「かなしい」「うれしい」「はずかしい」「うしろめたい」などの言葉です。
続いて、登場人物の言動から気持ちを読むことです。これができることで、心情把握はとても易しくなっていきます。セリフや行動に着目です。「父が『「うそを言うものではない!』と大声を上げた。」という記述があれば、これからは、父が誰かの何らかのうそをついたことに対して、はげしく怒っているということが読み取れるわけです。たとえば、「このときの父の気持ちを答えなさい。」という問題があれば、「○○とうそをついた主人公に対して、はげしく怒っている。」などと解答することになるわけです。
この時の留意点は、なぜその心情になっているのかの説明とともに解答を作るということです。「はげしく怒っている。」だけでは正解になりません。また、理由をきちんと書けても、「~大声をあげた。」とまとめては、心情でなく、行動を表したことになり、正解ではありません。これは、「~顔を赤くした。」などと同じです。顔を赤くしたのが、怒ってなのか、はずかしくてなのかを、文脈から読んで解答することが大切です。
心情語、言動に続いて大切なのは情景描写です。すべての物語文を扱った問題文に共通するわけではありませんが、風景などの描写に気持ちが表れている部分です。たとえば
「暗い雲が去り、明るい陽射しが私たちを照らした。」という記述からは、登場人物の明るく、希望に持ちた気持ちを読み取ることができます。
物語文では、心情を正確に把握し、答えを導きだすことが大切です。上記のような読み方によって、文章のなかから答えをさがしていくことが求められます。いくつか、入試問題の実例を紹介していきます。
●入試問題を見てみる
はじめに、駒場東邦中学校、2020年度の問題をとりあげます。本校は、例年物語文一題のみの出題で、2021年度もこれに変わりはありませんでした。さっそく心情を記述する問題を見てみます。
令和二年度 駒場東邦中学校 大問1より
問4 傍線部②「そんなことは意地でも口にしない」(4ページ)とありますが、ダンスに対してシッカはどのような思いを抱いていますか。母親への思いをふまえて、九十字以内で答えなさい。
シッカの心情を説明する問題です。傍線部の前後は,下記のように記されています。
本当はダンスは嫌いじゃないけど、そんなことは意地でも口にしない。たぶん母親の思い通りになるのがいやで、習っていたモダンバレエも小学校五年生のときにやめた。
設問には、「母親への思いをふまえて」とありますので、まずこれを明らかにします。
「母親の思い通りになるのがいやで」からは、母親への反発があることがわかります。これを具体的にまとめます。傍線部の少し前には、次の記述があります。
母親がサンバダンサーだから、シッカまでまとめてサンババア。シッカ自身はブラポル語(ブラジル・ポルトガル語、ブラジルで話されているポルトガル語)も話せないというのに。こんな迷惑なことがほかにあるだろうか。
「母親がサンバダンサーであることでからわれていることに、反発している」などとまとめるといいでしょう。
続いて、シッカのダンスへの思いをまとめます。これは傍線部の前後をそのまま使うことができます。本当はダンスが嫌いではないこと、また、母親の思い通りにダンスをすることは受け入れられないということを押えておきます。傍線部を含む一文をはじめとして、傍線の直前直後には、解答やヒントが多く含まれていることの一例です。
上記を整理すると、次のような解答となります。
「母親がサンバダンサーであることでからわれていることにより母親に反発しており、本当はダンスを嫌っていないのだが、彼女の思い通りにダンスをするのがいやで、ダンスを遠ざけている。」
本文中から、解答を見つけていけば、決して難しい問題ではありません。同じ大問からもう一問をとりあげます。
問6 傍線部④「そう、踊っている、ように思う」(6ページ)とありますが、ここで「ように思う」として、「踊っている」と断言していないのはなぜですか。五十字以内で答えなさい。
これも、シッカの心情を問う問題といえます。シッカが踊っていると断言できないのはなぜかを解答することが求められます。傍線部の直前は、”CDラジカセをアスファルトの地面に直置きして、二十代くらいの若い男が踊っている。”です。つづいて傍線部の後の記述に注目します。
”シッカはほかの同年代の女の子よりダンスに詳しい。(中略)でもこの踊りは、そのどれとも違う。”とあります。
この踊りが、自分の知っているダンスのどれとも違うということから、踊っているとは断言できなかったことがわかります。これが解答の骨子となりますが、字数制限が五十字の問題であるため、違いが何かを具体的に補足しておきます。この後にすぐに、次の記述があります。”一番違うのは、男の姿だ。男の右足の膝から先は途切れている~”とあり、この後、この男の踊りが見事だったことが記されています。男は義足でありながら、見事に踊っていたのです。これを加えて解答とします。
「若い男の踊りが義足であるにもかかわらず見事であり、自分の見知っているどの踊りとも違うから。」
設問の意図を正確に読み取り、本文から解答を見つけていくのが鉄則です。
続いて、近年人気の難関である豊島岡女子学園中学校の問題を見ていきましょう。
本校は大問が三題、説明的文章、物語文の読解に加え、漢字の書き取りが出題されています。2020年度の物語文から一問を選びました。
2020年度 豊島岡女子学園中学校(一回)大問1より
問八 傍線⑧「部長は殴られたかのように顔をゆがめ、俯いた」とありますが、この時の
「部長」の気持ちを八十字以内で詳しく説明しなさい。
この問題は、傍線部前後を引用してみましょう。
「はい。全国大会には、三年生の先輩たちで行ってきてください。僕は今日、こういう話じゃなく、『ケンガイ』や他の作品の話を、先輩たちとできることを期待していました。」
さらりと放たれた正也のひと言に、部長は殴られたかのように顔をゆがめ、俯いた。
部長は部長なりに正也のことを慮り、自分が引いて正也を行かせる、という苦渋の決断をしたのかもしれないけれど、それでも大切なことは見えていなかった。
「顔をゆがめ、俯いた」という行動となるきっかけのできごとは、正也に作品のことを話したかったと言われたことです。この時の部長の気持ちを説明することになります。傍線部の後を読み進めると、「大切なことが見えていなかった」とあります。正也に作品のことを話したかったと言われ、もっとも大切な作品に向き合うということを忘れていたということです。この時の部長の気持ちは、「はずかしい」といえるでしょう。
きっかけである、正也に作品のことを話したかったと言われたことについてまずふれ、作品に向き合うという大切なことを忘れていた、この時の気持ちは、「はずかしい」であることを記し、正解となります。念のため再確認しておきますが、心情説明問題では、ただ「はずかしい」では解答になりません。なぜその心情になっているのか、きっかけや理由を必ず記すことが大切です。
今回、首都圏の難関中学の入試問題から、物語文の出題を取りあげました。これらの問題は、問題文が長いことにも特徴があります。今回の問題もそうですが、こうした問題では、主人公の心情変化が良く問われます。主人公の気持ちが、何をきっかけに、どう変わったかを把握していくことで、問題は解けるようになっていきます。登場人物の性格は、物語のなかで変わることはあまりありませんが、気持ちはできごとをきっかけに動きます。これを捉えていくことです。